岡田もこの形。打としたのは繊細な一打で、代えて打としていればイーシャンテンにできた。しかしそれでは石橋らに対して分が悪いと見たようだ。
たろうが石橋から出たをポンして打で追い抜いた。シャンポン待ちにした要因としては、が石橋にポンされているのでが狙い目と見ただろうか。
石橋はかわされてしまうとつらい。なんとか待ちで追いつく。手の内からをそっと切った。
石橋からドラが出てきて緊迫感が漂う。たろうは待ち(はアガれない)に変化しており、手替わりも利きそうな格好となっていた。なお、和久津と岡田はともに受けに回っている。
石橋にがくる。ツモ切りに見えたが石橋の選択は違った。
「うわっ出た出た出たあーーーー!」(日吉プロ)
日吉プロが声を張り上げた。そう、石橋のあえての赤切りである。普通はありえない一打なのだが、上図の待ちを薄める効果を持つのだ。もうすっかり石橋の得意技になってしまった。
これを見て悩ましい選択を強いられたのはたろうである。通っていないをツモった。
普通に考えるならばから手出しでを切る人はいない。しかし石橋は過去に似たようなことをやっている。しかししかし、毎回そんなわけのわからないことをやるとも思えない。
たろうは石橋に通るを切った。これで単騎待ちに変化させる。
「否定していますからね。危ない」(日吉プロ)
「危険牌引いたら出る可能性ありますよね」(渋川プロ)
石橋にがきて、今度は手の内のと入れ替えた。
その直後、たろうはを引いた。これはの筋で通っていない。
「無筋きた!やばい無筋きた無筋きた無筋きた!」(日吉プロ)
「これは打たないですね」(渋川プロ)
「完全にっ!これはっ!決まるかっっっ!石橋の黒いデジタルが決まるかっ!」(日吉プロ)
たろうはじっくり考え、次の一打を放った。
「だあっ!石橋これは赤切りが生きたー!『俺を信用するんじゃねえぞ神様よぉ!』」(日吉プロ)
たろうはじっとアガり形を見つめていた。何が起こったのかと思ったに違いない。石橋は会心のアガりだろう。神様に向かって真っ赤な、いや真っ黒な舌を出してみせた。
ところでこの切りは本当によかったのか。渋川プロは「これはやったほうが得ですね」と太鼓判を押した。赤を切ってもダブドラ2で打点はそう変わらない。ならば元々出づらい待ちなのでちょっとでも出やすくするために打ったほうがいいと。事実、赤5を切っていなかったらあのは出ていなかっただろう。東3局1本場でのお返しの満貫を決めて石橋が2着目に立つ。
勢いに乗る石橋、続く南2局でも七対子のテンパイを入れて先制リーチ。待ちは。これは黒いデジタル関係なく字牌単騎にするのがベターだ。ただ、河が濃いので警戒されてしまう恐れがある。岡田と和久津は守備力が高く、そう安々とは出ない。
ご覧の通り止め切っている。そして神の怒りに触れたとばかりにじわじわと力を蓄えている者がいた。もうお分かりだろう。
ゼウスことたろうである。強烈な手を作って追いかけようとしていた。
を引き、待ちのテンパイに取る(打)。ここはリーチをかけず。周りに対してまだ目立っていない状態なので、石橋の現物であるがひょっこり出てきてもおかしくない。
最終盤、たろうはドラを引いた。これは目立ってしまう。
意を決してリーチ。三面張だが山にはの1枚しかなかった。しかし1枚あれば鉄槌を下すには十分であった。
石橋の最後のツモはなんとラスと1枚の。
「うわっやり返したーやり返したあああ!」(渋川プロ&日吉プロ)
地獄に叩き落とすかのような12000点の1.5倍返し。裏も見事に2枚乗っている。ゼウスの怒りに触れた者はこうなるのだ。
石橋はぷくーっと頬を膨らませグスッと鼻をすすった。先ほどはあれほど見事なアガりを決めたのに。思わず同情してしまう。これで終わったかに見えた石橋だったが、最後の最後に意地を見せた。
南4局2本場。
石橋はラス目に立たされている。2着とはずいぶん点差が離れているため、現実的な目標としては3着の岡田を抜けるかどうか。