これぞMリーグ!
史上屈指の名勝負を制した、
園田賢の策略と仕掛け
文・東川亮【木曜担当ライター】2020年12月3日
大和証券Mリーグで、どんな試合が見たいのか。
推しチームが勝つ姿、それも希望の一つだろう。
一方で、麻雀の内容についてもそれぞれに好みはあるかと思われる。
鳴きを使わず仕上げた門前高打点。
鋭い鳴きによる速攻や巧みなさばき手。
遠い仕掛け、目立つ河による相手との駆け引き。
徹底して放銃を回避し、点数を守る守備力。
そして、お互いの意地と誇りを懸けたぶつかり合い。
そのどれもが魅力的だが、全てを堪能できる試合などそうそうあるものではない。
第2回戦
北家:石橋伸洋(U-NEXT Pirates)
東1局:瀬戸熊が貫いた信念
瀬戸熊は、5巡目のをスルーした。
親番ということで鳴いて手を進めようという打ち手もいるかもしれないが、それは雷電の麻雀ではない。
打点が見えるなら、ギリギリまでそれを追求するのが彼らのスタイルであり、それに呼応するかのようにを引き入れる。
ただ、15巡目でイーシャンテン、石橋がツモ切るはさすがに鳴くかと思われた。
鳴けば役なしテンパイだが、鳴かなければテンパイすら相当危うくなる。
目先の親番ほしさに食いつく人は少なくないだろう。
瀬戸熊は鳴かなかった。
確度の高い山読みか、あるいは予感があったのか。
とはいえ目先には明確な利益が見えており、食いつくのは自然とすら言える場面。
そんな男が引き寄せた、そして。
この4000オールがアガれる打ち手が、果たして何人いるだろうか。
自身とチームの信念を貫いたと言えるアガリで、まずは瀬戸熊がこの試合をリードする。
東3局:園田の問い、多井の割り切り
2巡目、園田がを鳴いた。
アガリに向かう自然な手筋・・・と言いたいところだが、鳴くにはいくらなんでも他の形がバラバラすぎる。
ただ、親がの一鳴きをしたことが、他者にはどう見えるのか。
園田と言えば鳴きを駆使する打ち手で遠い仕掛けも使うが、親番で手が入っている可能性もなくはない。
ドラ絡みの染め手やトイトイなどでの高打点も、手牌の中が見えない以上は疑念が拭えず、好き勝手には打てない。
園田は牌で問いかける。
「みなさんは、この仕掛けをどう判断しますか?」
多井は敏感に反応する。
リスクに対する感度は極めて高い打ち手であり、自身の手もアガリまで遠いなら、あっさりと手を崩す。
暗刻のを落とす途中でさらに1枚引き、多井の河にはが4枚並ぶという異様な光景が広がった。
リスクに対し手が見合わないときは、未練を残さず守備に回って点数を守る。
この割り切りこそ、多井隆晴という打ち手の素晴らしいところだと感じる。
一方で、手がまとまっているなら向かっていく者もいる。