そして8チーム中唯一、ファイナルの舞台を経験したことがない。
逆襲を誓って臨んだ2020シーズンも、89戦を終えて-269pt。
いわば3年間、雷電は負け続けてきた。
この試合で苦しむ黒沢は、まるでこれまでの雷電の苦しみをトレースしてきたかのようにすら思える。
でも。
まだ、勝利への道は途切れたわけではない。
今度こそセミファイナル、そしてファイナルへと進んで優勝し、仲間と喜びを分かち合いたい。
そして、3年間辛い思いをさせてきた雷電ユニバースに喜んでほしい。
あるいはそんな感情が、黒沢を突き動かしていたのではないだろうか。
2巡後、黒沢がツモった。
それは山にたった1牌だけの、最後に残った希望。
降りかかる逆境の数々に抗い続け、ついにたぐり寄せた、雷電の可能性を紡ぐラストピースだった。
2000-4000は2500-4500、黒沢咲、逆転トップ。
試合が終わり、黒沢は必死で感情を押し殺しつつ、小さくうなずいた。
その姿はまさしく、雷電の「ヴィーナス」。
華奢に見えるその身の内に、決して折れない強さを秘めている。
雷電はこのトップで、下位2チームに決して小さくはない差をつけた。
後は最終日の結果で、セミファイナル行きを決める6チームが決まる。
黒沢は最後の戦いを「1ファンとして見届けたい」と語った。
どのような結末になろうとも、それは各チームが90戦を全力で戦った末に生まれたものだ。
きっとTEAM雷電のメンバーも、U-NEXT Piratesやセガサミーフェニックスの敗北を願う、ということはないはず。
レギュラーシーズン最終日、どんなドラマが生まれ、どのチームが勝ち上がるのか。
最後の瞬間まで、目が離せない。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。