やっほーい! 儂じゃよー! 今日も元気に3000・6000! 麻雀歴1000年の鴉天狗、千羽黒乃が今週もキンマwebに参上じゃ!
節目の連載40回となった今週は番外編。麻雀について普段とは違った切り口のお話をしていくのじゃ!
お主は「AI」という単語に聞き覚えはあるかのう? コンピュータ上で動作する人工的に作られた知能を意味し、古くからSF小説や映画の題材として扱われてきたテーマじゃが、なんと近年、このAIが麻雀を打つようになったことで大きな話題を集めているのじゃ!
その名も「麻雀AI」! 読んで字のごとく、人間に代わって麻雀を打つAIじゃ!
その発達は目覚ましく、最高峰のプロであるMリーガーの方々も注目されているほど!
んっふっふ、お主も麻雀AIが気になってきたじゃろう?
麻雀AI「スーパーフェニックス」登場!
現在もっとも有名な麻雀AIといえば、Microsoft社の「スーパーフェニックス(通称”Suphx”)」をおいて他にはいないじゃろう! オンライン麻雀「天鳳」で初めて10段を達成したAIとなった「Suphx」。その強さはまたたくまに広く知れ渡るところとなったのじゃ。
このAIの特徴は「ディープラーニング」を取り入れたこと。
「ディープラーニング」とは、あらかじめプログラムされた動作によって動くのみならず、コンピュータが自ら学習し、改善を続けて性能を向上させてゆくことじゃ。将棋や囲碁のような完全情報ゲームと異なり、隠れている情報が盤面に多く含まれる麻雀をAIが攻略するのはまだまだ時期尚早だろう、人間の強豪プレイヤーに追い付くのは困難だろうというこれまでの見方は、「Suphx」の登場によって大きく覆されたのじゃ!
この「Suphx」は現在も「天鳳」で稼働しており、誰でも対局したり牌譜を閲覧することが可能となっておる。
Microsoft社は、このSuphxのような「不完全情報ゲームを攻略するAI」を研究することで、最終的には天気や株価など現実の事象を予測するAIを開発することを目的としているとのこと、今後のAI技術の発展にも期待が高まるのじゃ!
麻雀AIはどんな麻雀を打つのじゃ?
ではこの「Suphx」がどのような麻雀を打つのか? というのは誰もが気になるところじゃろう。これを語るためにはAIの思考に関する情報が公開されていないため、推測を含むのじゃが、という前置きが必要じゃ。
聴牌への手組みや押し引き判断、オリの精度が高いのはもちろんのこと、最も特徴的だと儂が感じたのは、「他家の攻撃に対する備え」が常に出来ていること。全員の安全牌の価値を重く見ており、「他家の攻撃に対して無防備になることがほとんどない(リーチや明確な押しを受けたときに、比較的安全に通すことができる牌が手の内に必ず1枚はある)」というのがSuphxの麻雀の強みじゃ。
「デジタルな打牌」というと、一昔前ならば「確率や統計データを重視して、常に受け入れ枚数を最大にする」、「聴牌したら手替わりを待たずに即リーチ」、「リーチを受けたら手を崩してでもベタオリ」のような麻雀を指す表現じゃった。しかしSuphxはときにスリムに構えて安牌を抱えたり、安全度の高いターツを落としながら粘ったりと、これまでの麻雀AI観を覆すような柔軟な打ち筋と強さを感じるのじゃ。
AIにできないことはなんだろう?
では、AIが人間(と鴉天狗)を越える麻雀を打つようになったとき、人間(と鴉天狗)はどんな麻雀を見せていくのじゃろう? AIにできないこととは一体何じゃろう? それは「打牌で意思を表現すること」じゃ!
知ってのとおり麻雀は技術だけでなく、運やメンタルも大きく作用する競技じゃ。生きた人間はときどき意地や欲望、決意など、様々な感情によって期待値が低い牌であっても切ることもあり、そうしたメンタルのブレがときに筋書きのないドラマを呼び、麻雀特有のエンターテインメント性を生むというのが儂の考えじゃ。そうした感情のこもった、熱を帯びた打牌をすることで、「自分の麻雀」を表現してゆくのが、今の儂の目標じゃ!
打牌を見せると同時に、言葉も届けたいのじゃ!
麻雀AIは評価値に基づいた正確な打牌を行う一方、なぜその評価値になっているかは明らかになっていない部分が多くあるのじゃ。そのためAIの牌譜や解析データから麻雀を学ぼうとすると、読む側にも相応の知識が必要なのじゃ! そこで儂が考えたのは、「自分の打牌の基準を明確にし、初心者の方にも分かりやすい言葉で伝えられるようになろう!」ということじゃ。
自身が良い麻雀を打つだけでなく、感情を表現することでエンターテインメント性を持たせ、さらに分かりやすい言葉で意図を伝える。麻雀配信者として、今後一層大事にしていきたいものじゃ!
AIはどのように利用されるのじゃ?
高度に発達した麻雀AIは、今後どのように利用されてゆくのじゃろう?
儂が最も注目しているのは、AIの牌譜を教材として麻雀戦術がより一層発達してゆくことじゃろう! すでに麻雀AIを題材にした戦術書やオンラインイベントなども行われており、いずれも非常に興味深いものじゃった! 儂も自身で何百とAIの牌譜を検討し、自らの麻雀をさらにブラッシュアップするべく精進しておる。性能向上を続けるAIの麻雀から、今後ますます目が離せなくなりそうじゃ!
また、麻雀に先んじてAIが発達した将棋界で行われている試みとしては、プロVS将棋AIの団体戦「電王戦」を行ったり、中継画面にもAIによる「評価値」や「候補手」を画面に表示してしまうというものがあるのじゃ。
面白いと感じるかは見る人次第といったところじゃが、麻雀は知らなくとも人工知能に興味のある方が見てくれるようになったり、麻雀に詳しくない人でも麻雀番組が楽しめるようになったりするかもじゃ!
まだまだ進歩を続けてゆく麻雀AI。これまで未知とされてきた部分、曖昧だった部分が、AIの力によって解明される時代がもうすぐそこまで来ている…のやも? 新時代の予感に、今からワクワクが止まらないのじゃ!
ときにAIから技術を学び、ときにAIと共に歩み、より一層麻雀を盛り上げていきたいものじゃな!
鴉天狗の姿をしたVtuber。キンマwebで『VTuber千羽黒乃の麻雀講座』を連載中。趣味は歌と麻雀。麻雀歴1000年、天鳳は最高九段。
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