「誰も自分には興味がないと思って動画を作ってます」堀内正人(ほりうち・まさと)のYouTube魂

2021年1月の売上は200万円

元麻雀プロ・堀内正人さんのユーチューブの人気が急上昇している。動画の再生回数、チャンネル登録者数が順調に伸び、麻雀関係のユーチューバーとしてはトップクラスの人気だ。2021年1月の売上200万円。

なぜ、今、堀内さんがウケるのだろうか? (文・赤松薫)

とにかくカット編集にこだわる

近年、Mリーグの人気が出たこともあって、無料で手軽に視聴できる麻雀動画が増えている。多くの麻雀プロもいろいろな配信を行っているが、そのなかにあって堀内正人さんのユーチューブの再生回数の伸び方が著しい。現状として多くの麻雀プロが、ノートではわせりんさん(前号のドキュメントMで紹介)や福地誠さんを、ユーチューブでは堀内正人さんを超えられないのはなぜだろう? ユーチューバーとしての堀内正人さんに話を聞きながら、考えてみたい。

そもそも堀内さんがユーチューブの配信を始めたのは2020年の1月。マカオで小倉孝プロ(日本プロ麻雀協会)と1軒の家に住み、徒歩30秒のカジノでポーカー三昧の生活をしていたときだ。

「世界のヨコサワチャンネル」に触発されて1月にユーチューブを始めてみたものの、3月の売上は8万円(売り上げはドルで確定し、その時の為替レートによって円で振り込まれる)。ちょうどそのころ世界的な新型コロナウイルス拡大により、マカオでポーカーができなくなったこともあり、4月に帰国して仙台でお母さんと2人暮らしに。そこから本格的にユーチューブに力を入れ始めた。

堀内さんにユーチューブの話を聞くと、動画の内容よりもまずその作り込み方を語ってくれる。その語り口が、非常に熱い。

「僕は編集にこだわっています。動画は、最初の15秒が勝負です。わかりやすいタイトルを工夫し、本題にすぐ入れるようにします。『こんにちは』なんて言いません。無駄な時間は、視聴者の時間を奪っているだけなので、1秒も無駄なことを流さないのが大事だと思っています」

ユーチューバーという以上は、それで収益が上がらないと話にならない。ユーチューブで、収益化が認められる条件は

  • チャンネル登録者数 1000人以上
  • 動画再生時間     4000時間以上

まずこの条件をクリアしないと始まらないのだ。

「ユーチューブを始める時、ツイッターのフォロワーが1万人いたので、すぐにクリアするだろうと思っていましたが、開始直後のチャンネル登録者は200人でした。ツイッターとユーチューブは層が違うんだということがその時にわかりました」

堀内さんは、登録者数を増やす戦略を考えた。ユーチューブには短い広告が表示され、この広告が収益に結び付く。8分以上の動画では、広告をどこに入れるかを自分で決められるし、「おすすめ動画」として表示されるので視聴者の人に見てもらいやすく、収益が上がりやすい。そこで堀内さんも10~20分で投稿するようにした。

「10分の動画を作るのに10時間くらいかかります。編集するときは、空白の時間を作らないように、1~2秒でも無言のところはカットします。このカット編集は本当にちゃんとやっています。「ライブ配信」として垂れ流すと視聴者が退屈してしまうし、クオリティが低くなるので僕はやりません。ときどき、生配信をすることがあっても、後でちゃんと編集してから残すようにしています」

と、徹底している。単なる世間話や、飲食シーンを長時間見せても意味がないとわかっているのだ。

チャンネル登録者7.93万人(2021年4月26日現在)月間売上は1月には200万円を超えるもその翌月は70万円に落ち次の月は100万円

「編集のための設備投資もかなりしましたよ。4Kのモニターの映る30万円のパソコンを買い、8万円のホームビデオも買い、編集ソフトも2つ購入しました。そのうちの1つは5万円もしました」。でも結局自分は、シンプルにカット編集を繰り返して、『絶え間なく有益な情報を提供する』というスタイルにこだわることに落ち着きました。高いソフトは使わなくても画質はいいし、満足してます。もうひとつ上のアイフォンが出たら、それは買おうかなと思っているところです」

麻雀の内容を旅にしたら人気が

堀内さんが一躍有名になったのは、旅打ちを始めてからだ。それまでは、麻雀プロだったころのエピソードなどのトーク動画を投稿していたが、月間売上が40万円を超えることはなかった。

「1回目の緊急事態宣言が解除になって少し外に出てもいいかなという気になったので『旅動画』を思いつき、試しにまず宮城県の古川市に行ってみました。これは、電話さんという人がノートで紹介していた麻雀「チョンボ」で打つためです。マンズがすべて抜きドラの3人麻雀で、その実践動画がおもしろかったので、今後は旅動画にしようと決めました。行く場所はいくらでもあるので、ネタに困らないですしね。観光・グルメ・地方の麻雀の3つをセットにして、まずは神社やお寺などの名所を観光し、おいしいものを食べて、それから地元の雀荘で麻雀をするという組み立てにしよう、と」

本格的な「旅打ち」として最初に訪れたのは、山形県の米沢市。仙台からは車を運転して1時間くらいだった。

「米沢ではブー麻雀を打てる店に行きました。ツイッターなどで告知していたので、現地の視聴者の方が来てくれて、動画の許可もスムーズに取れ一緒に打って楽しかったです」

自分ではなく内容で勝負

再生回数が増えるにつれて、堀内さん個人の人気も高まって来たのではないかと思うが、堀内さんはきっぱりと否定する。

「いいえ、視聴者のみなさんは、『堀内正人』という自分に興味があるのではなく、あくまでも麻雀動画の内容に興味があって見てくれるということはよくわかっています。それは、動画再生数に顕著に表れてきて、似たような動画を続けて投稿すると再生回数は落ちるし、視聴者にとって有益な情報が入っている動画は伸びます。それだけ、皆さんが麻雀に対して真剣なのだと思います」

ユーチューブの評価は、数字できちんと表れる。ウケるものは繰り返し再生され、ダメなものは再生されない。そして広告の再生回数が売上になる。振り込まれる金額が、良いものを発信する人の背中を押してくれるシステムだ。

「今までの自分は生活のすべてを麻雀やポーカーのギャンブルに投じていましたがユーチューブでコンテンツを生み出すようになって充実感を得られるようになりました。麻雀やポーカーの動画を投稿してゲームの普及に貢献して、対価を得られることに、とてもやりがいを感じています。手間暇かけて企画を立てて、編集をする価値があり、一生懸命やってよかったなと思えます」

麻雀プロだったころより真剣に打っています

元々麻雀プロだった堀内さんの目に、「Mリーグ」はどう映るのだろうか? 麻雀プロへの未練は?

「現在のMリーグは、『麻雀を一生懸命やっていて、この先何があるのだろう?』と思うような真っ暗闇の中、手探りで頑張っていた人たちの、ごく一部がようやくたどり着いた所で、その場ができたことは本当に素晴らしいと思います。

でも僕は今の環境が気に入っていて、今から団体に所属して、リーグ戦に割く時間が惜しい、というのが正直な気持ちです。僕は麻雀プロだったころから、自分のプレイヤーとしての限界は感じていて、身近にいた白鳥翔プロのほうが自分より強いと思っていました。今から麻雀プレイヤーになるよりは、麻雀の動画を作って投稿することで、もっと麻雀を広めていきたいです。新しい視聴者の中には、『堀内さんって麻雀プロだったんですか?』という人もたくさんいて、時代は変わっていくのだなと思います。

今、僕はフリー雀荘や、高齢者のみなさんとの健康麻雀だったり、いろいろな場所で打っていますがその一つ一つに、公式戦と同じかそれ以上の緊張感があります。この対局は一度きりでも、動画として残すことで何万回も再生して、みんなに見られるのだと思うと真剣にならざるをえませんよね」

堀内さんの動画はプロにも作れるか?

堀内さんの動画は、タイトルにも「ちょっと見てみたいな」と麻雀ファンに思わせる工夫がなされている。例えば

「<雀鬼流>牌の音に道場破りいってみた」

「元麻雀プロが出禁覚悟で歌舞伎町のヤバそうな雀荘で本気を出した結果」

など、自分で出かけて行くにはちょっと抵抗があるが、機会があれば中をのぞいてみたい……そんなところに連れて行ってくれるのが、堀内さんのユーチューブ動画なのだ。

巷の麻雀愛好家が本当に見たいのはこういうところなのに、いわゆる競技麻雀プロの肩書を持って、「いつかは自分もMリーガーになりたいです」「競技麻雀が最高です」と標榜している限り決してまねできない。

堀内さんは、お話を聞いていてもとても穏やかで謙虚だ。決して自分自身から「麻雀プロたちのできないことをやって見返してやる」などということは言わないし、金輪際思っていない。「みんなが興味を持つのは麻雀動画の内容だ」と割り切り、自己主張の部分を丁寧にそぎ落としながら質の向上に努めた堀内さん。その内容が人々を引き付け、ファンを増やし。それが協力者にもなり、視聴者になり、再生回数が増え……とうまく軌道に乗ったのは当然のことだが、ある意味皮肉だ。

もっと詳しくは近代麻雀5月1日発売号ドキュメントMで

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