今日だけは、
魔王ではなくヒーローに……
文・渡邉浩史郎【火曜臨時ライター】2025年3月11日

第1試合
東家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
南家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:渋川難波(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:勝又健志(EX風林火山)
開局、

寿人の手はリャンシャンテンであった。七対子や役牌での打点を残してではなく
を切り出す。

すぐにイーシャンテンになっての局面。優秀なくっつき牌や赤を引けばの対子落としでタンヤオ移行も考えられたが、引いたのは第一打に
を切ってしまっている
。これではさすがにシャンテン戻しは出来ぬと切り飛ばす。

いつ切られてもおかしくないの対子だったが、その選択をするまでもなく
を暗刻にしての聴牌を入れる。渋川の先制リーチにぶつけたこのリーチのみが……

勝負手の茅森から一発で出て、5200の和了り。導かれるような和了りで先制を果たす。

続く【東2局】、寿人はこの形から引いてきたをツモ切る。
を切っての目一杯にしたところで増えているのは
の受け入れと、そこからさらにソウズが変化したときのシャンポン受けの最大5枚のみ。
それならばを受けれてかつ567の三色も残るこの一打が自然にして最適の一打と言えるだろう。

そんな寿人の意思に呼応するかのように、持ってきたのは。そして

だ! 当然のリーチで大きなリードを決めに行くが……

ここは追いついた渋川のリーチ、そして茅森と勝又のナイスセーブによって止められてしまう。リーチ棒を出したことで500点の収入に。

そして続く【東2局1本場】は茅森の1300・2600を親被り。

【東3局】、から仕掛けだした寿人は
を引いたところでなんと
の両面落としを敢行。
と
で和了れば役牌・チャンタ・三色・ドラのマンガンと、ここで打点を見た進行に移る。
から切ったのは
の引き戻しで両面が残るようにとの判断だ。

しかしすぐに茅森からリーチを受ける。裏目のを引かされた寿人は、
で粘ることなく
を中抜いてベタ降り。

と切っていれば和了りがあったか…… と思いたくなるような
引き。
しかし今日の寿人は何かに導かれるように、数奇な運命をたどっていく。

渋川の押しで
が切れるようになり、さらにお帰り
。
か
を切れば聴牌だが、ドラそばということもあってこれを拒否。アタマの
を切っていく。

押している親の渋川も気になるため、安全牌候補のを残して今通っている
を並べ打ち。それでも手牌はするすると聴牌方向へ進む。

幾度もの和了りのがしを経由して、ほとんど危険を冒すことなく辿り着いたのはこの単騎。

これが追っかけてきた渋川の当たり牌となる。寿人も迂回劇もこれで終わりかと思われたが……

同巡、茅森が一発で掴んだのはなんと! これは……

同時にロンがかかる牌! 寿人のアタマハネだ!!
回しまわして辿り着いたのは、渋川のリーチ棒が出た一番高くなるタイミング。
そしてこの2000点+リーチ棒の計4000点の加点を最後に……

加点なしのまま、なんとこの半荘を逃げ切ってのトップ獲得となった!

勝利者インタビューで寿人が語ったのは本日3/11登板という意味について。
寿人は仙台出身であり、たびたび地元東北への思いを口にしていた。自団体の東北支部で行われている震災復興支援チャリティーにも忙しい合間を縫って毎年参加している。
今回の大船渡の森林火災も当事者でこそないものの、非常に近しい関係の方が被害に遭われている中で、絶対にトップを取って何かメッセージを届けたいという思いを語ってくれた。