……?
そう。多井の真骨頂、配牌降りだ。
親の上家であり、親に仕掛けられたら絞りも効くということで、暗刻になったも切っていく。
実際に三枚目のを切って、伊達に鳴かれた後は
一九字牌のオンパレードで一切伊達に麻雀をさせない。
そうして脇の子供にアガらせて、見事点棒を減らすことなく局消化を果たした。
【南3局】
二着目朝倉の親番で入ったのは勝負手。ここをアガり切ればオーラスのハネツモ条件を消せるだけに、頑張りたいところだ。
ポンポンロンで簡単かと思われたが、一枚切れのが深く、予想外に長引く。
だがここで天運が多井に味方する。多井の引いてくる牌がいずれもピンズマンズの上に、結構な数の両面が通ってしまったため、ソーズを打ち切れない親の朝倉がここで一旦迂回策。
そして聴牌を入れていた茅森からドラが打ち出されてマンガンのアガリとなった。
オーラスも配牌降りから七対子聴牌までこぎつけるが……
最後は朝倉が二着確保のアガリで、見事多井はトップを獲得した。
71.9ptの大きなプラスは一戦目日向のラスを帳消し、チームポイントもプラスに戻しただけでなく、多井自身にも大きな意味があった。
なんとこの半荘のトップで、多井が前人未到のレギュラーシーズン累計ポイント1000.1、点棒にして100万100点ものプラスを叩き出したのだ。
(出典:Mリーグ成績速報(非公式)様 https://twitter.com/mleague_results)
そこそこの大トップ条件だったのにこの半荘でしっかり乗せてくるあたりが多井のスター性を物語っている。
麻雀というゲームの競技性を考えると、ここまで安定した成績はまさに驚異の一言。勝つべくして勝っているといっても差し支えないだろう。
しかしそんな多井にさえまだ達成できていない悲願がある。
それはチームの優勝だ。
昨年のファイナル、多井は連投に次ぐ連投でチームを最後まで引っ張りながらも、その頂を掴めなかった。
渋谷ABEMASが頂に立った時、そこにいる多井隆晴はもはや人間の領域を大きく超えているのではないか。そんな不安さえ脳裏をよぎる今日この頃である。