サニーサイドへと歩み出した
二階堂瑠美、
切願する武田軍の想いよ届け
【Mリーグ2021 レギュラーシーズンメモリアル】文・松崎良文【特別寄稿】
早速だが、何切る問題から。東3局・ドラ。
あ、訂正しますね。どうする問題。
カンがマジョリティを占める牌姿であることは承知の上。
2月25日(金)第1試合に登場したEX風林火山・二階堂瑠美選手は、このをツモ切った。
他家の動向や今局までの過程、仕掛け倒れやリーチ空振りに妖風を察しての慎重な選択ではあるが、やや消極的に映ってしまうのは致し方ないだろう。
今から約20年ほど前、まだ私がプロ入り間もない頃、二階堂姉妹はすでに麻雀界のスターダムを駆け上がっていた。
リアリスト気質な妹・亜樹とは対照的に、壮大なスケールと繊細さが併存する姉・瑠美の異彩に魅了されたファンも多いことだろう。
その活躍ぶりを昔から知る筆者は、レギュラーシーズン90試合、その膨大な局数の中から気になる場面として、今局の出来事を取り上げたい。
試合翌日、瑠美はこの場面を振り返ってこう語る。
「普段の対局なら、迷わずカンしてるんだけどね・・・」
視聴者の特権、それは無責任である。
斯く云う私も、ツモ切りは意外な選択に思えた。
カンしてほしい。カンしてしまえ。ドキドキしたい。
体内から湧き出る興奮への欲求が、画面越しに抑制される。
リスクを取る者、それは対局者本人に他ならない。
チームやファンの期待を背負って卓に着く。
その重圧は、あの席に座った者にしか分からない。
なんとなく気軽に想像してみても、きっとそれを遥かに超えてくる。エグいくらいに。
だからMリーガーは尊いのである。
こうして、カンドラやリンシャン牌などの未来線は閉ざされた。
だが一方で、或る結末への道筋が残された。
次巡、上家のにチーの声を掛けて5200のテンパイ。
これがすんなりとアガれずに局面は長引く。
下家のリーチや親の仕掛けが入り、場が熱を帯びた終盤に悩ましい来客。
残り2巡、今度こその何切る問題。
何を切ってもテンパイは維持できるが、リーチに通っていないの序列は低いだろう。
また、が全部見えたことにより単騎にしか当たらないドラのも、せっかく上昇した打点を下降させる面白味の無さと、万が一のリスクにより却下される。
仕掛けている親と対面は手出しが続き、トーンダウンが見て取れる。
警戒すべきはリーチ者だけで良さそうだ。
となると、・三暗刻・ドラ3の跳満を安全に維持するが最善手か。
しかし、瑠美の選択は違った。
ああ、それがあったか。
いや、待て。
フーロ牌はタンヤオのシュンツであり、現状の役を捨てての安全策とは何故に・・・。
「の待ちが微妙すぎるんだけど、ハイテイツモに懸けてみた」
そうか、9巡目でカンを選択しなかったからこそ、消えたはずのハイテイツモ番に活路を見出したのか。
しかし、目論見通りにハイテイのツモ番が回って来るかは不確実であり、勝負所の戦術としては泡沫的な印象が残ってしまう。
次巡のツモ牌は、
このを押せればハイテイチャンスの権利継続だが・・・、
戦闘隊形が後ろ向きとなったであろう前巡の選択を踏まえれば、ここでの撤退も自然な成り行きだったのかもしれない。
そしてハイテイ。
止めたが重なってテンパイ復活。支出のつもりが収入へ。助かる。
ちょっと待って! プレイバックっ!!
前巡に戻ってみようか。
この前巡、ではなくリーチ者の現物であるを切っていたとしよう。
ツモ チー