苦しいのは自分だけじゃない 二階堂亜樹、息詰まる熱戦を制したビタ止め【Mリーグ2021観戦記3/28】担当記者:東川亮

しかし、それには【5ソウ】が通せれば」という前提条件がつく。そして【5ソウ】に、通る確実な保証はない。

時間をかけ、打ったのは現物【3マン】。亜樹はオリた。相手がラス目の親で、トップ目からは行きにくいのも理由の一つではあっただろう。「勝負どころはここじゃない」。亜樹は試合後に、この場面を振り返って語った。

沢崎の待ちはまさしく、亜樹が止めた【2ソウ】【5ソウ】だった。結果は流局。

この局面については、解説の藤崎智が非常に興味深いことを言っていたので、そのまま紹介したい。

「亜樹みたいなタイプは、【5ソウ】が通る理由を探す。この場合、実際に【5ソウ】が当たり牌だから、通る理由はだいたい見当たらないので切らない。だから切るならノータイム、少考するなら切らないとなる」
「今主流の『デジタル』と呼ばれている人たちは、打ってもいい理由を探す。だから少考後に放銃になることもある」

これはどちらが正しいかという話ではなく、思考方法の違いである。もちろん、押してアガリを取れることも、オリてアガリを逃すケースも、間違いなくある。ただ、いずれにしてもそこに至る根拠がトッププロにはあるわけで、それを考えてみるのは、麻雀のレベルアップを考えるのであれば重要なことだと思う。東1局の【2ピン】押しも強気がどうこうではなく、彼女の中で冷静に精査し、通る理由が見つかったから打った、ということだったのかもしれない。

その後は茅森の満貫、沢崎のハネ満ツモと高打点が飛び出したが、亜樹が逃げ切ってトップを獲得。対局後にはカメラに向かってにこりと笑い、頭を下げた。

「苦しいのは自分だけじゃない」
その言葉を聞いてすぐに、手元のメモにペンを走らせた。麻雀を打っているとどうしても、自分ばかりがキツいように思ってしまうことがある。ただ、相手にだって厳しい状況はあるのだ。それは卓内の戦いだけでなく、今のMリーグのような、ファイナル進出争いの局面であっても一緒だ。亜樹がセミファイナル初トップを取ったとはいえ、未だ風林火山は厳しい状況に置かれている。しかしメンバーは亜樹を筆頭に、そのなかでも活路を見いだそうと、冷静に、熱く闘い続ける。

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