苦しいのは自分だけじゃない
二階堂亜樹、
息詰まる熱戦を制したビタ止め
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2022年3月28日
朝日新聞Mリーグ2021-22セミファイナル、3月28日の第1試合。EX風林火山が最初に発表したのは、松ヶ瀬隆弥だった。しかしその後、体調不良につき急遽出場を取りやめ。まずは松ヶ瀬が大事に至らず、無事に戦線復帰を果たすことを願いたい。
松ヶ瀬に変わって出場したのは、二階堂亜樹。チームは6位、かつイレギュラーな対局となるが、ピンチをチャンスへと変え、浮上のきっかけをつかみたい。
第1試合
東家:二階堂亜樹(EX風林火山)
南家:日向藍子(渋谷ABEMAS)
西家:沢崎誠(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
個人的に、印象に残る場面だった。東1局。親でダブを仕掛けていた亜樹は、沢崎のリーチに対応しながら待ちのテンパイを入れていた。だが、ハイテイ手番で引いてきたは、ワンチャンスとはいえドラ、もし打って放銃すれば明らかに高い。
沢崎のリーチの前から、は場に3枚切れていた。強気な打ち手はもちろん、普段からテンパイ料の価値を重く見ている打ち手も押しそうな牌だ。だけど、亜樹はオリると思った。普段から守備意識が高く、万が一の大事故も徹底してケアする選手だという印象があったからだ。
予想は外れた。亜樹のプッシュ。
もしオリていたら、一人ノーテンで3000点と親番を失っていた。チームの状況、気持ちの持ちよう・・・理由はどうあれ、この日の亜樹はいつもより強気に攻める意識があるのかな、と思った。
でも、気持ちがあれば手がついてくるほど、麻雀は簡単ではない。つないだ東1局1本場では、 勝負にならない形から日向のチートイツドラドラに放銃。亜樹は、この一打をひどく悔いた。
東2局では、沢崎の早いリーチ、そこに動いた茅森の仕掛けに対し、テンパイ取らずで打ったが茅森への5200放銃。ちなみに沢崎の待ちは、どうしようもなかったとはいえ、連続失点は厳しい。
東3局、亜樹はツモり三暗刻の1シャンテンには受けない、切り。は既に1枚切れていて三暗刻にはなりにくいため、タンヤオやドラ引きで好形や打点を作りにいく。
タンヤオでテンパイ。ただ、待ちのはが沢崎にポンされていて薄いため、いったんはダマテンに構える。
だが、生牌のをツモ切るところでリーチをかけた。切って鳴かれたときには打点・形ともに戦いにくく、かといって守備もしにくい手牌。だったら攻めに出よう、ということだろうか。
このとき、親の沢崎はタンヤオドラ赤赤の満貫テンパイ。当然のごとくグイグイと押していく。
ここは亜樹が勝った。ツモって裏ドラを乗せて、2000-4000、点数の回復に成功する。
この後、亜樹は東4局1本場、
南1局2本場、
南1局3本場と、3局連続でリャンメン待ちテンパイから即リーチをかけるが、いずれもアガれず一人テンパイで流局。どうにも焦れったい展開が続く。
だが、日向は亜樹以上に焦れていた。東4局1本場では赤が3枚にドラのある良形1シャンテンが最後までテンパイせず、
南1局2本場では中を仕掛けてドラドラ赤赤の先制テンパイを入れるも、最後はオリにまわらされた。ドラ赤をたくさん持っているのにノーテンで局が終わるのは、麻雀でたまるストレスランキングの5位くらいには入るだろうか。
南1局4本場。供託リーチ棒3本は、いずれも亜樹が出したものである。さすがにこれは自分で回収したい。
ここは目いっぱいの6ブロック進行でさまざまな可能性を残し、
を仕掛けてペン待ちテンパイ。
自らツモって供託を回収、トップ目に浮上した。
南3局、今度は亜樹にドラ赤赤のテンパイが入った。ダマテンで満貫、アガれば勝利をグッと手繰り寄せる、ダメ押しの一撃となる。
だが、そこに親の沢崎のリーチが飛んで来る。
一発目に引いたは、リーチには通っていないものの宣言牌がで片スジ。そして自分の待ちは沢崎の捨て牌にがあり、現物待ちでかなりアガリが取れそう。何より自分の手は、オリるにはあまりに価値が高い。