ハロウィンの夜を熱狂させた 松ヶ瀬隆弥とっておきのギフト【Mリーグ2022-23観戦記10/31】担当記者:東川亮

松ヶ瀬がポン。手の内にはドラ【8マン】がトイツ、アガれば満貫という大物手になる。

続いて【2ソウ】をポン、メンツ候補が定まった1シャンテンに。ただ、この【2ソウ】は暗刻から鳴いている。あらかじめ鳴く想定をしていなければ、切られたとしても瞬時に声が出にくい牌だ。特に、対面から出た場合は時間を使って考えられないのでなおさらである。

【7ソウ】を重ねて受けが広くなっていたところで、【7ソウ】をポンしてテンパイ。

【6ソウ】を切って、カン【3ソウ】待ちテンパイを入れた。自然にスジの待ちになっているだけでなく、【2ソウ】を自身でポンしているだけに、4枚目の【2ソウ】を使ったカンチャン待ちは盲点になる。

この仕掛けに対し、優も追いつく。【6ピン】を切れば、【1ピン】【4ピン】待ちテンパイ。「戦闘民族」と言われる男なら、ここも当然の攻めか。

とは言え優の目から見ると、この【6ピン】は相当に打ちづらい。【5ピン】がポンされているとは言え4枚目は見えておらず、それ以外のピンズの真ん中はほとんど切られていない。そして自身のツモ番はあと3回で、待ちになる【1ピン】【4ピン】【1ピン】が3枚切れでアガリ目は薄い。一方、親の松ヶ瀬は【6ソウ】が現物、【2ソウ】3枚見え、自身が【3ソウ】2枚持ちで、【3ソウ】の危険度はかなり低そうに見える。

できる限り安全にテンパイを取りきる。リスクとリターンのバランスを見た【6ソウ】切りでのローリングが、

【1ピン】引きでの一発ツモ逃し、そして

【3ソウ】での12000は13200放銃という、優にとって最悪、松ヶ瀬にとって最高の結末へとつながった。

戦闘民族は、戦闘狂ではない。無謀に戦うだけではない優の回避ルートに、松ヶ瀬の繊細かつ巧妙な罠が仕掛けられていた。

さらに次局、松ヶ瀬はツモ【白】三色ドラ3赤2、あまりに強烈な8000は8500オールをツモアガリ。

麻雀に勢いや風があるのかはさておき、松ヶ瀬がこのアガリでトップに立つだけでなく、大量リードを作るまでに至った。

ハロウィンの夜、松ヶ瀬がそっと送ったプレゼント

オーラス1本場
ラス目の優が2巡目にして【3ピン】【6ピン】【9ピン】待ちのリーチをかけた。高目三色になる【8マン】ではなく【5マン】入り目となったのがやや不服だが、高目【3ピン】【6ピン】をツモって一発か裏が絡めば伊達を逆転し、3位で試合を終えられる。

親の茅森は、優に倍満を放銃しても2位をキープできる。リーチがないものとばかりに押しまくり、こちらもリーチまでこぎ着けた。

それでも優がアガリを決めるかに見えたが、リーチ対決は終盤までもつれ、優・茅森ともに最後のツモでもアガリは生まれず。最後は松ヶ瀬がハイテイ手番を迎えるのみだったが・・・。

茅森の切った【1ソウ】に松ヶ瀬が手を止め、

ポン。
リーチ者の優にハイテイをまわす異端の選択。これにより、流局以外に2つのルートの可能性が生まれた。

1:優のツモアガリ・・・自身のトップが確定
2:優が茅森に放銃・・・茅森のアガリで試合が続行

1で終わればそれでよし、問題なのは2のケースだが、茅森の打点が9600以上でなければ自身がトップ目のままでもう1局となるし、満貫だったとしても次局の茅森との点差はテンパイノーテンで変わる程度で、アガリ勝負の状況となるだけ。それを恐れるよりは、優のツモで試合が終わるパターンの可能性に期待した形だ。逆転条件のある優が2巡目にリーチをしたということは、手を組み替える必要がないほど、打点も形も整っていそうとも読める。そこにハイテイという1役をプレゼントして、よりハネ満条件をクリアしてもらいやすくする狙いもあった。

たとえハイテイをまわしたとしても、何事も起こらず流局することがほとんどだ。しかし、それをサボらないことで、このような僥倖が起きることもある。優がツモった、なかったはずのハイテイ牌は何と高目ツモの【3ピン】。リーチツモタンヤオピンフ赤、それにハイテイがついて、ハネ満条件をクリアした(ちなみに裏も乗っていた)。

松ヶ瀬がそっと送り込んだギフトは、優に着順アップの幸運をもたらすこととなった。そのあおりを食ってラス落ちした伊達、逆転の可能性をつぶされた茅森にとっては、たまったものではないのだが・・・。

もちろん、松ヶ瀬が優にハイテイをプレゼントしたのは、自分が勝つため、そしてファンに勝利を届けるためである。ラス覚悟の状況からの大逆転、最後のハイテイ手番パスによるフィニッシュ。あまりに鮮やかな一戦には、ファンのみならず視聴者も興奮したことだろう。松ヶ瀬隆弥のハロウィンギフト、楽しんでいただけただろうか。

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