「西」の因縁を断ち切れ! 内川幸太郎の単騎選択によって生まれた勝負の綾【Mリーグ2022-23観戦記12/12】担当記者:江嵜晋之介

「西」の因縁を断ち切れ!
内川幸太郎
単騎選択によって生まれた
勝負の綾(あや)

文・江嵜晋之介【月曜担当ライター】2022年12月12日

第1回戦


東家:内川幸太郎((KADOKAWAサクラナイツ)
南家:仲林圭(U-NEXT Pirates)
西家:萩原聖人(TEAM雷電)
北家:近藤誠一(セガサミーフェニックス)

「綾(あや)」という言葉がある。

元を辿れば織物などで線が斜めに交わった模様を指す言葉で、転じて「表面的には見えないが、たどると見える入り組んだ仕組み」を指す。
麻雀の文脈で使われる場合は主に後者で「勝負の綾」「綾となった牌」などと言われることが多く、各者の思考が交差した上でたどり着いた結末は、常に見ている人の想像を大きく超えてくる。

12月12日第一試合、今シーズン不調が続く4選手が集まった本対局でも、その綾を感じる局面がいくつかあった。

東1局。開局早々、先制に成功したのは仲林だった。

ツモ・タンヤオ・ドラ赤の2,000-4,000。仲林は3巡前に【5ソウ】【8ソウ】待ちのテンパイを入れていた。出アガりだと5,200と少しもったいない気もするが、リーチはかけず息を殺してダマテンを選択していた。

テンパイした時の場況がこちら。

全員が【5ソウ】もしくは【8ソウ】を切っており、誰かがリーチをかけた場合は【5ソウ】【8ソウ】が放たれやすい。また直前に親番の内川が【5ソウ】ツモ切りの後に【1ピン】を挟んで【7ソウ】を手出ししているため、【8ソウ】を1枚以上持っている可能性が高い。

自身の手だけで考えれば喜んでリーチをかけたくなる手牌だが、仲林の緻密な麻雀はそれを許さない。

今シーズンまだ1回しかトップがない仲林、2勝目に向け幸先の良いスタートを切る。

流局を2回挟んで東4局2本場、またしても仲林が動く。
2巡目、萩原から切られた1枚目の発をポンしてドラの4sを切る。

打点こそ安く見えるものの、スピードで圧倒すれば問題はない。
4巡目、近藤が切った【7マン】をポンして【5ピン】【8ピン】待ちのテンパイ。

道中に嬉しい【赤5マン】を引き、その数巡後に近藤から【5ピン】をロン。
2,000点は2,600点の出アガりでさらにリードを広げる。

ここまでは、完全に仲林のペースに思われた第一試合。
しかしこの東4局2本場の仲林が發を仕掛けたタイミングで、解説の土田プロがあることを予言(?)していた。

土田:「ただ、ただですよ日吉さん。これアガるとするじゃないですか、そのあと苦しむと思いますよ。南場」

実況の日吉プロも「何をそんな非科学的な…」と一蹴していたが、土田プロ曰く、1枚目の発ポンは仲林の本来のスタイルではないのではないかと。

もう一度手牌を見てみよう。

確かに一枚目の【發】をスルーしたとしても、発を暗刻にするルートはもちろん、【6マン】【8マン】を引いての一盃口やドラ【4ソウ】周りを引いてのリーチ平和ドラなど、門前でのテンパイも十分に狙えそうだ。Mリーガーの中でも鳴く派・鳴かない派は別れる気がする。

ただ冷静に考えれば、31,000点持ちの残り5局と、34,600点持ちの残り4局では、どう考えても後者の方がトップ率は高く、仲林の1枚目ポンもごく普通の選択に思える。

しかし、奇しくも南場はその予言通りの展開となる。

南1局。この試合、後半の主人公は間違いなくこの人だろう。

内川幸太郎だ。
南場に入り、最初にテンパイを入れたのは親番の内川。

七対子の一向聴から山に1枚しかなかったドラの【8マン】を引き入れてのテンパイ。他の牌から入っていれば、強制的にドラ単騎を選択せざる得なくなっていたが、手の自由度がグッと上がる。打【5マン】として【8ソウ】単騎のヤミテンに構える。

同巡の仲林。

ドラドラで平和・一盃口の一向聴だが、リャンメンから入ると暗刻の【8ソウ】が出てしまう形!仲林が欲しい【2ソウ】【5ソウ】【6ソウ】【9ソウ】が山にゴッソリ残っていたため、放銃は秒読みかと思われた。

しかし、同巡に事態は急変。萩原が打ち出した【7ソウ】に仲林がすかさずポンの声をかける。タンヤオ・ドラドラの【2ソウ】【5ソウ】待ち。
今度は内川が待ちの【8ソウ】を使い切られたテンパイを入れられピンチに。

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