魚谷侑未・鈴木優の3局
師弟によるデッドヒートを
制したのは
文・ZERO/沖中祐也【火曜担当ライター】2022年12月20日
病的な負けず嫌い
私のようなおじさんは、ずっと「推す」という感覚がわからなかった。
過去に広末涼子に熱狂し、石原さとみに恋した。しかしそれはどこか絵空事で現実感がなく、結局自分が生きていくことで精一杯だったのだ。
現代において誰かを「推す」ことが当たり前になったのは、その繋がりが濃くなったからだろう。
SNSを使い、著名人たちに直接声を届けることができ、反応をもらうことも多々ある。
ちょっと前からすると考えられなかったことだ。
そう感じたのは、身近な人間がMリーガーになったからである。
鈴木優。
ついこないだまでくすぶっていた彼は、その実力で遠い場所にいってしまった。
我々東海勢からすると、優は希望の星であり、憧れの背中でもある。
私は5年目にして初めて誰かを応援しながらMリーグを見ているのだ。
ただ、そのMリーグではまだ思うような活躍ができていない。
ここまで12戦でトップは2回。スコアもまだマイナスだ。
優は病的な負けず嫌いである。
たとえ勉強会でも負けると本気で悔しがっているし、枚数的に有利な勝負で負け続けると山をほじくり出すことも多い。
「外面十段」と言われているが、内面は根っからの麻雀好きであり、そういった意味では子どもっぽい純粋な部分が大半を占める。
この夜は地元の愛知(岡崎)にて「全国一気通貫ツアー」と称されたパブリックビューイングが行われていた。そして下家に魚谷が鎮座していることから、勝ちたいという渇望はいつもより大きくなっていたに違いない。
第1試合
東家:日向藍子(渋谷ABEMAS)
南家:滝沢和典(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
北家:魚谷侑未(セガサミーフェニックス)
師弟対決と言われた2人の対決は、これまで2回とも魚谷にトップを取られている。
あの負けず嫌いの優が気にしていないわけがない。
実際この日の闘牌において、優はPiratesカラーのような青い炎をまとっているように見えた。
まさかのツモアガリ拒否
オーラスを迎えるまでも紆余曲折あったのだが、ここからが濃密だったので、敢えて厳選して紹介する。
南4局、状況を整理しよう。点棒状況はこちら。
一応魚谷がトップ目に君臨しているが、2着目の優とは1500点差であり、テンパイノーテンや親被りで変わってしまうベニヤ板1枚ほどのリード。3着目日向も差はなく、もはや魚谷自身もトップ目という意識すら持っていないだろう。
そんな魚谷の3巡目。
をツモって何を切るか。
イーシャンテンにとるなら、イッツーを見るならという手があるが…
いや、この手はタンヤオだ。と必要牌が限定されるイッツーよりもタンヤオのほうが受け入れは広くて柔軟である。
さらに2巡後
をツモってを切る。
一見は不要に見えるかもしれないが、このを残すことはめちゃくちゃ重要だ。
まず、ツモ で仕掛けの利くイーシャンテンになる。
例
他にも急所のカンがチーできるのも大きい。
例
チー
仕掛けを考えたときにがあるとないでは雲泥の差だ。
こうした鳴きを駆使した手組は魚谷の十八番。いや… この鳴きを教えてくれたのは
優である。