「お前たちはまだ戦える──」天はまだドリブンズを見放さない 園田賢に訪れた、メークドラマの兆し【Mリーグ2022-23観戦記1/30】担当記者:江崎しんのすけ

手牌の殆どをソーズが占めているホンイツがくっきりと見える手。普段からホンイツはあまり狙わない」と公言している小林だが、この手なら手なりでホンイツに仕上がりそうだ。

選択肢の無い、簡単な手かと思いきや...
小林はこの手牌に、ある工夫を施す。

4巡目、イーシャンテンになったところで自風の【南】を引く。重なれば【4ソウ】【7ソウ】の2度受けを解消しつつ、満貫への打点アップも見込める。

しかし、小林はなんと【7マン】を手にとどめたまま【南】をツモ切り。

そして直後に魚谷からツモ切られた【9ソウ】をポンして打【7マン】
【5ソウ】【6ソウ】のシャンポン待ちでテンパイする。

【南】を手に置いていようがテンパイの形は同じ【5ソウ】【6ソウ】になるが、大きく違うのは捨て牌のイメージだ。

【南】を手にとどめていた場合の捨て牌はこうなる。

この捨て牌の場合、使いやすい【5ピン】【7マン】よりも使いにくい字牌の【南】を持っていることになるため、容易にホンイツと読むことができる。
しかも2回鳴いた後に字牌が余っているため、ある程度形の整ったホンイツが予測できそうだ。

しかし、実際の小林の捨て牌はこうなっている。

ホンイツの場合、最後に出てきた【7マン】に違和感がある。
自分でも使える可能性があり、後々安全牌になりやすい【南】を先に切ってでも手に残していた【7マン】は、手牌に関連する牌に見えるからだ。

もちろんこの情報だけでホンイツは否定されないが、ホンイツの場合は遅い手と読む方が普通だろう(普通の手から【7マン】【9マン】を落としてホンイツに移行している最中に見える)。

小林の待ちは【5ソウ】【6ソウ】と良い待ちとは言えず、勝負が長引けば追い打ちを食らう可能性もある。

しかしこの一瞬、他家が手牌を読み間違える数巡は、【5ソウ】【6ソウ】の出アガリも十分に期待できる。

小林が撒いた罠にかかってしまったのが、魚谷だった。

2巡後、【8マン】を引いたところ。

【5ソウ】も使える手ではあるが、小林の最終手出しが【7マン】のため、早い手の場合は【8マン】【9マン】が使いにくく、ホンイツの場合はまだテンパイしていることが少なそうなため、先に処理する意味もこめて打【5ソウ】とする。

この【5ソウ】が小林の注文に嵌る。
【發】ホンイツは3,900点の出アガリ。

トップ目の魚谷がラス目の小林に放銃したことで、全員が2万点台になる。その後大きな点数移動は無いまま後半戦に突入した。

南2局2本場
園田の2回目の親番。トップ目でここまで来ることができたが、29,500点といつ逆転されてもおかしくない。

トップを確固たるものにするために、ぜひとも加点したいところだが...

打点・スピードともに文句のないチャンス手が入る!
2メンツできており、ソーズ・ピンズが連続形になっているのですぐにでもテンパイしそう。

しかし、先にテンパイを入れたのは配牌で七対子のイーシャンテンだった小林。3巡目に【5マン】を重ね、【1ソウ】単騎でリーチをかける。

そして同巡、園田は絶好の【4ピン】を引きテンパイ。
【2ピン】なら一盃口で、裏が乗れば6,000オールまで狙える大物手に仕上がる。

当然の追いかけリーチかと思われたが...

園田はそっと【3ソウ】を縦に置いた。ダマテンに構える。
小林の捨て牌に高目の【2ピン】があるため、もしかすると数巡以内に他家から放たれるかもしれないからだ。

理屈はもちろん理解できるが、このヤミテンも相当な覚悟がないとできるものではない。

思惑通り他家から【2ピン】がこぼれれば何も問題ないが、小林が【2ピン】【5ピン】をツモ切ったり、自身で【2ピン】【5ピン】をツモった場合は、本来加点されていたはずの点数を損していることになる。今回の場合は4,000~12,000点を取りこぼす可能性を秘めている。

雑な言い方をしてしまえば、こんな手はリーチしてしまう方がよっぽど簡単だ。

大多数の人がリーチをかける手だし、仮にリーチをかけたことで他家の25pが止まり、アガりまでたどり着けなくとも、園田に文句をいう人はいないだろう。

しかし、それでも園田は踏みとどまる。

「できることは全てやる──」

たとえツイていようといなかろうと、園田のやることに何ら変わりはないのだ。

園田が【3ソウ】を押したあと、魚谷は打【南】、滝沢は打【中】とする。
まだ現物を抱えている可能性があるため、もう1巡様子をみる。

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