南3局1本場。
6巡目にのみのカン待ちダマテンを入れ、リャンメン待ちや三暗刻への変化などを狙っていた瑠美が、5回目のツモ切りでリーチを宣言した。が高宮から3枚切られてピンズの好形変化が見込みにくくなったこと、の状況がやや良くなったことなどが理由か。
直後、園田もテンパイ。待ちなら十分勝負になりそうだが・・・
腕を組んで、考え込んでしまった。彼の目にはそれほどまでに、打ち出すが危なすぎるのだ。
ツモ切りリーチになる理由はいくつかある。「手変わりを待っていた」「鳴かれそうな牌で様子を見た」あるいは「気が変わった」などだが、最もポジティブなのは「待ち(場況)が良くなった」というもの。そう考えた場合にカギになるのは直前に3枚目が切られたで、浮かんでくるのが瑠美の待ちが4枚目のを使ったカンのパターンだ。となると、は切れない。
それでも形で、あるいは楽観的に考えて切りリーチを選ぶ人もいるかもしれない。しかし園田は、読んだ以上は甘えない。直前のに反応がなかったことを踏まえての切りで単騎テンパイとする。
ツモ切りリーチは愚形待ちのケースも多い。今回であればマンズやソーズの中張牌を切っている瑠美にピンズの愚形もあると考え、もストップ。
園田もテンパイを取りきって流局。
瑠美は身を乗り出して園田のいびつなテンパイ形をのぞき込み、
園田も自分の読みが合っていたことを確認し、一人うなずいた。このテンパイ料は大きかった、はずだった。
瀬戸熊逆転に向け、オーラスの園田の手はまとまりつつあった。1シャンテンのところにを引いて少考。
園田の選択はツモ切り。切りとの2択だったそうだが、ロスが少なくを重ねて三暗刻になるテンパイを優先。
無情にも河に並ぶ。
高宮がツモ切ったは、を残せていればリーチで捉えていたであろう牌。それを忌々しげに横目に見つつツモ切ったを見て、
「ロン、8000は8600」
高宮が試合の終わりを、瀬戸熊のトップを、そして園田のラス落ちを告げた。
園田は痛恨、瀬戸熊は安堵。2人の表情は、対照的とまでは言わないものの、両者の明暗をハッキリと表していた。ただ、この結果もまだ過程に過ぎない。レギュラーシーズン終了までおよそ1ヵ月、その先にどんな結末が待ち受けているかは、この試合のように1牌の後先、一つの選択で大きく変わる。
その行く末を、ぜひ最後まで見届けていただきたい。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。