渋川難波の大敗── それがもたらしたかけがえのない価値【須田良規のMリーグ2022-23セレクト・3月3日】

3月3日(金)第2試合KADOKAWAサクラナイツ渋川難波は箱下ぴったり3万点、
-90.0ptの大きすぎるラスを引いてしまった。

この日はサクラナイツがオンラインパブリックビューイングを開催しており、
初戦が岡田紗佳の大トップだったものの、その+62.2ptを失ってお釣りが来るほどのマイナスに、
少々配信の雰囲気が重苦しくなる様子があった。

とはいえ渋川の大量放銃自体の内容が実際悪かったわけでもなく、
二度のマンガンはリーチ負け、
他も点棒がなくなっての不可避の失点であり、ラスそのものを避けることは厳しかったと思う。

大きなダメージとなったのが東2局

TEAM雷電瀬戸熊直樹がこのカン【3ソウ】リーチ、それを受けての一発目、渋川である。

全体図を見てみよう。

中スジの【4マン】を切れば【1ピン】【3ソウ】のシャンポンテンパイだ。
しかし【3ソウ】は小林が切っており、目に見えてもうない。

実際これをテンパイに取っても、【1ピン】が瀬戸熊の安全牌というわけでもないので、出アガれる可能性は低そうだ。

このような手牌だと、いったん【3ソウ】を切っていわゆる浮かせ打ちをするのが手筋だと思う。
【4マン】を切ってほとんどアガれない形にして、次巡危険な他のマンズを引いてはどうしようもない。
【3ソウ】【4マン】にくっつけば、ピンフイッツーなどの好形勝負手になる。

問題は、【3ソウ】が通るかだ。

瀬戸熊は配牌からカン【3ソウ】とカン【7ソウ】のイーシャンテン、4巡目にも【6ソウ】をツモ切っている。

7巡目に【4ソウ】もツモ切り。

観戦していたチームメイトの内川幸太郎は、この頃から
「これやられると本当にヤバいんだよ」
と、これから渋川に降りかかる災禍を予見しているようだった。

熟考の後、渋川の手から【3ソウ】が放たれる。

渋川ももちろん単純にスジで【3ソウ】を通せると思ったわけではない。
ペン【3ソウ】は警戒したが、【1マン】が場に4枚出ていることを確認して、三色の決め打ちもなかった。

しかし、渋川は罠にかかった。

そしてこの瞬間の放銃自体は責められないと思う。
リーチ一発赤赤裏裏のインパチと、痛恨の極みではあるが──、やはり【3ソウ】を切るのがその後の攻め返しの手順としては自然だ。

ただ試合後。
チームメイトが渋川の内容について苦言を呈した局が、他にあった。

南1局、点棒は大きく沈んで箱下24500点。
【南】をポンして【赤5マン】【6マン】がくっついた北家の9巡目だ。

ドラは【2ソウ】。渋川はここから【1ソウ】を切った。
ドラの縦重なりだけ残して、リャンメンリャンメンの2600進行だ。

これを渋川は自身、
「フラフラしてしまった」
と語る。

ほとんどラスは決定的だし、傷を深くしないためにも早く局を進めることを優先しようと。
一応ドラは持ちながら、点数はともかく最速の形にしたと。

「これはピンズのリャンメン払って5200以上を狙おうよ」
堀と内川は、こう諭した。

受けを狭くして1000が2000になるようなことに意味はないが、5200以上はやはり話が違う。
いかに点棒がなくとも、残り少ない局数で打点を見切ってはいけない。
ペン3s受けを残しておけば、ドラ重なりの対応もできる。

どんなに着順アップが霞むような状況でも、5200だって4回アガれば1着順だと。
内川は放銃した局を責めることは決してなく、ただこうした渋川の気概を叱咤した。

この局はドラの【2ソウ】を浮かせたまま3着目のリーチを受けて撤退したが、

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