目覚めた魔王の全てを消し去る一撃 セミファイナルの幕が開く──【Mリーグ2022-23セミファイナル観戦記4/10】担当記者:江崎しんのすけ

例えばこのような手牌だったとして

ここから【5マン】を切ってしまうと、【5マン】の暗刻の他に【4ソウ】を暗刻にしたテンパイケースも逃してしまうので計4枚の受け入れを失くすことになる。

しかし今回の手では

他のターツがシャンポン受けになってるので、【5マン】を切ったとしてもテンパイチャンスを失うのは【5マン】の2枚だけだ。

そして何よりのメリットが、【3マン】【6マン】待ちになった時に強い河になることだ。

実際に寿人は8巡目に【3マン】【6マン】待ちテンパイを入れたが、
テンパイまで【5マン】を持っていたとすると、下のような河になる。

最後の手出しが【5マン】なので、役牌が暗刻のケースでは【5マン】周りの牌が読みの本命となるだろう。
しかし実際の河では最後の手出しが【9ソウ】。これでは【3マン】【6マン】待ちと読むことは難しい。

チーして【5マン】を打った時も、【5マン】【7マン】【9マン】と持っているところから【8マン】をチーしたように見えるので、【4マン】【5マン】【5マン】から【5マン】を切ったパターンは盲点になる。

テンパイまでの受け入れは少し減ってしまうが、テンパった時のアガリやすさを重視したバランスの良い一打と言えるだろう。

この待ちも役もわからない寿人の仕掛けに対して、親番の亜樹は場に出ていない【東】をノータイムでツモ切りする。

他の役牌は全て1枚以上切れているため、役牌バックの場合は東の可能性が高いが亜樹は迷った素振りすらなかった。

試合後のインタビューによると、亜樹は寿人の仕掛けを「役牌暗刻か純チャン系の手」だと読んでいたらしい。

詳しく語られなかったが、寿人への人読みが根拠だったのでは無いかと思う。

ガラクタリーチが代名詞の寿人だが、こと仕掛けについてはバラバラから仕掛けることが少ない。ある程度まとまっているか、高打点が確定しているかのどちらかが多い。

ましてや今回はトップ目から仕掛けているので、テンパイしてからもオリを選択できる役牌暗刻を本線と読んだのではないだろうか。

【東】はツモ切った亜樹だが、純チャン系や三色に必要な【1ソウ】【7ピン】は切らなくても良い進行を選んでいた。

この亜樹の読みとは少し違う考えを持っていたのが松本だった。

現状2着目の亜樹の親番なので、トップ目の寿人としてはなんとしても親を流したいはず。そのためいつもより前に出てくるはず。

役牌バック・安手での仕掛け(チャンタ・三色のみなど)も十分にあり得ると考えていたそうだ。

この両者の読みの違いが、この局の結果に大きく影響する。

亜樹がノータイムでツモ切った【東】

実際には愚形残りのリャンシャンテンなのだが、役牌バックの可能性もあると読んでいる松本からは、【東】を勝負してきた亜樹に本手が入っているように見えたのだ。

亜樹の手がまとまっていて、もしかするとドラも固まっているからこそ、寿人の仕掛けに押せているのかもしれない。そうなると寿人の仕掛けが安い可能性も少し上がる。

亜樹からリーチが入る前に2人の安牌を抱えつつ、かつ七対子での復活も狙える打【3マン】を選択する。

しかし、その先に待っていたのは大きな落とし穴だった。

開けられたのは寿人の手。手の中には【發】とドラ【4ソウ】の暗刻。
発・ドラ3赤の8,000点。まさかの高打点に、苦悶の表情が松本の顔に浮かぶ。

東場を終えた時点で寿人の点数は5万点を超える大トップ目に。
南場は松本・亜樹がアガリを決め寿人を追随するが…

再び魔王の鉄槌が下されたのは南2局2本場
親番の松本が【東】・ドラ1のテンパイを入れる。

3巡後、ラス目の瑞原がドラ【9マン】を切り【3ピン】【6ピン】待ちのリーチをかける!

山に残っている枚数はほぼ互角。
2人のめくり合いになるかと思われたが…

魔王はそれを許さない。
2人に通っていない【4ソウ】を叩き切り、追いかけリーチをかける。

寿人の待ち枚数も、2人とそこまで差がなく誰がアガってもおかしくない状況だった。

しかし、「アガるのは寿人」
そう思わせる何かが今日の寿人にはあった。

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