熱論!Mリーグ【Fri】
諦めない男、鈴木たろうが
見せた粘りと高宮まりの変化
文・危険な鬼太郎/2020年2月28日
直近の女流選手のドラマが凄い。
黒沢咲はオーラスに四暗刻単騎をアガリ大逆転トップを決め、魚谷侑未は開局に国士無双をアガリ今期の最高得点を記録した。
そして今夜の1回戦のメンツもまた荒れそうなメンツだ。小林剛、鈴木たろう、高宮まり、沢崎誠と高い打点や鳴きが大好きな雀士だらけ。
特に赤坂ドリブンズとパイレーツはボーダー争いの直接対決。チーム事情の関係としても荒れないわけがなかった。
1回戦
東1局1本場 供託1
たろうが1巡目からをポン。
安定のホンイツにまっしぐら。とりあえず辺りを切って見ても面白いが、どうせ手のターツが愚形だらけで終盤勝負になる手牌。
ならば、ド終盤になった時に勝負が出来るように打点だけは作っておきたいところ。愚形の二千点聴牌なら勝負にしにくいが、愚形のマンガンならたろうはいつでも勝負できる図太さがある。
これに対する親番の小林の対応が面白い。
一見すると678の三色が見える良い手牌に見えるが、巡目は5巡目かつ1面子も出来ていないし、下家が露骨な染めてのたろう。
無難にや辺りを切るだろうと思っていると、
ここは打。ドラのを切った。中々この牌をこの手牌で切れる選手も珍しい。
自分の手牌はタンピン三色まで見れるまごうことなき勝負手。だから要らない字牌のを切っただけとも言える。
このタイミングで切っておかないと、もうたろうに向かって切れないお荷物のになってしまう。
たろうがをポン。
目に見えての役役ホンイツの勝負手。捨て牌が露骨なだけに他家はたろうの河を中心に考えて打牌をしなければないけない。
これに合わせて小林がカンをチー!
何もせずともたろうが役役ホンイツの2000-4000をアガる可能性が高まってきた。4000点のオヤッかぶりは余りにも痛い。ここはたろうの手を潰したい。
この引きによってタンヤオのイーシャンテンになった小林。こうなればたろうのホンイツを交わす、勝負に値できるタンヤオの勝負手だ。
ここはを先打ち。-と-のタンヤオなのでアガれる感触は十分と見ての先打ちだ。
コレをたろうがチー!
カンでチーをすれば-待ちにも取ることができたがここはリャンメンで鳴いてドラ単騎。小林が早々にドラのを切って誰も合わせ打ちをしていない。
このは山にいる。さらにこれで役役ホンイツドラドラの跳満になった。
これに合わせて小林が聴牌。
ドラの先切りや切りでの見事なタンヤオの聴牌だ。たろうが目立っているこの局面でのピンズ待ちは余りにも強すぎる。
そして初牌のを引いてきて、すぐに降りを選択できるのも小林らしい。この1500の聴牌でたろうの見え見えの八千点以上確定の手には打てない。
たろうの一人舞台になるかと思いきや、この仕掛けに高宮は屈せず、
たろうのマンズ仕掛けにもマンズを打ち切り、小林のタンヤオ仕掛けに対しても中張牌を押し切っての-のピンフ赤赤のリーチ!
これにたろうが放銃!
切りリーチで-は危険筋とはいえ、自身の手が跳満の聴牌。降りる選択肢はなかっただろう。
リーチ一発ピンフ赤赤のマンガン!終盤に入り、女流の強さが目立つ。
東3局はたろうがドラ単騎のリーチを打つものの…。
小林の役牌ホンイツ赤のマンガンに放銃。ボーダー争いのパイレーツとドリブンズの、バチバチとした点棒のやり取りが続いている。
東4局
たろうがまたもや七対子を聴牌しての即リーチ!
下家の高宮が、序盤にをポンしていて聴牌が濃厚。やでリーチはしたくはないが、もう牌を選んでいる巡目ではない。
本当は理想的な牌を引いてのリーチがしたいが、その牌を手残ししていないし引けるとも限らない。ましてや自分はダンラス。七対子はツモって裏が乗れば跳満まで見れる勝負手だ。
もやをブロックしていてピンズが場に安い。良い待ちに見えるが1枚見え。ならばやはり場に見えてない単騎でのリーチになる。
役牌赤赤の3900。高打点勝負の手がことごとく負け続けるきつい展開。
高宮の好調は止まらず、南1局のトップ争いライバルの小林の親番を、
リーチドラウラの8000を、沢崎からアガってこの局を流した。高宮の攻守のバランスが場を支配してくる。
さらにたろうの不運は続き、
南2局のたろうの親番で沢崎が、清一色、赤の跳満をツモ!
このツモでたろうは箱下6000点にまで沈んでしまった。配牌が悪く、聴牌を果たしてもアガない。さらには跳満の親被り。負の連鎖が続く。
対して高宮は絶好調だ。
親番でこの5800を小林からアガリ、トップ街道をひた走る。これは高宮得意のリーチ攻撃が見れる展開だなと思いきや、続く1本場では、
このピンフドラ1のヤミテンを見せた。-は場に3枚見え。
いつもの高宮ならばリーチと言ってもおかしくはないが、ここは盤石の戦いを心掛けた。沢崎や小林からリーチが掛かり放銃することのリスクを考えた。
この選択は凄く良いように見える。-はそこまで良い待ちじゃない。上家のたろうは国士気配でを持っていそうだ。
寿人や前原辺りならば即リーチを選択しそうなものだが、藤崎ならヤミテンを選択しそうだ。ここでの一番の罪は沢崎や小林にマンガンや跳満を放銃することだ。
ここは慎重にを小林から捉えて2900は3200のアガリ。麻雀は選択肢の幅が狭い打ち手より、たくさんの引き出しがある打ち手の方が強い。
去年の高宮ならばこれをリーチしてツモアガった未来もあったかもしれないが、私にはこの高宮の麻雀は柔軟で良い選択に見える。
対して次局は、
この単騎でのリーチを見せつけた。この捨て牌と前局のヤミテンを考えると、これはドラの単騎の七対子リーチに見える。捨て牌がこれも露骨に変則的だ。
粘るたろうが聴牌。
567の三色聴牌と言えども、高宮の河がもう強烈。あの手牌で字牌もバラバラと切っておりリーチと来たならばほぼ七対子のドラ単騎濃厚だ。ここは打辺りが無難か。
しかしたろうはドラを叩き切ってのリーチを敢行。たろうとしてもこれには打算がある。
跳満を2回ツモれればパイレーツを交わして2着にアガれるのだ。たったそれだけの理由だが十分すぎる理由だ。
これに困ったのが小林。
この河が強烈な2件リーチ。共通安全牌が尽きるのも必然だった。こうなると消去法で考えるしかない。
マンズとソウズの中張牌は無筋でたろうに切れない。メンタンピン辺りで当たりそうだ。
と、なると通りそうなのはとが通った中筋のと、たろうに現物のと筋のだろうか。
ととを比較した場合、は切れない。高宮が序盤に切ったを活かしての単騎リーチは十分にある。ならばとだが…。
安全度が高そうなのはだ。「はたろうに現物だけど高宮の七対子に危ないだろ!」と思われがちだが、は場に2枚切れている。流石の高宮でも地獄の単騎ではリーチしてこないだろう。
しかし小林はを切った。
は確かに通りそうだが…。絶対ではない。高宮が単騎でリーチしている場合もあるし、普通に七対子じゃない場合もあり得る。なら中筋で3枚あるを小林が選ぶのも当然。1枚通せば3枚通せる。
たろうのリーチがハネツモ条件を残した。
オーラス
親の沢崎がをポンしてあっという間の聴牌。
沢崎はもちろんこの手牌で緩める打ち手ではない。この手は間違いなくアガれそうな3面張だ。問題はどの形でアガるか…。
手始めに小林から切られたをダイミンカン。これでリンシャンでツモれば9600のアガリ。おしくもリンシャンではアガれなかったものの、これで4800まで打点が上がった。
さらにもポン!
多少アガリにくくはなってしまったが、ここで打。-のノベ単に待ち変え。安めのでも9600の手になった。さっきまで3900点だった手がだ。
これに翻弄されるのがサイボーグ小林。
ここから通りそうなを打たずにの中抜き。は通りそうだが、その次に打つは危ない。沢崎はのダイミンカンととのポンで自分の手が高い事を晒している。
ここでは現物しか切れない。放銃すればたろうとの順位が入れ替わってしまう可能性が高い。
小林が降りてたろうが終盤に聴牌を入れて、これでたろうにはマンツモ条件が残った。さっきまで箱下6000点のダンラスだった男が、マンガンツモで3着になれる位置までに付けた。
しかし続く1本場は
小林が軽くさばいて自分の3着を確定させたのと同時に、高宮の久々のトップとなった。
Mリーグを観ていて思うのだが、去年とは違いとても華やかな対局が増えた印象がある。恐らくは各チームに女流が一人以上いるせいだろうが、そのおかげで観ている視聴者としてはとても楽しい目で見れるのではないだろうか?
勝利者インタビューなどでは女流の方が受け答えが非常に上手く、面白い事を言う選手が多く華がある。
強くて強面のおじさんたちを女流たちが麻雀で叩きのめしていく姿が見れるのもある意味Mリーグの魅力ともいえる。
小説家に憧れる中で、競技麻雀に惚れ込んだ二十代。視聴者と一緒の視点に立ってわかりやすい記事を書いていきたい新人ライター。