思惑と感情が入り交じる3月も
鈴木優は己の麻雀を貫く
文・東川亮【金曜担当ライター】2024年3月1日
3月。
セミファイナル争いが大詰めを迎える最後の1ヵ月は、全チームのファンが心からMリーグを満喫できる時期と言えるかもしれない。それを楽しいと思えるかは、各々の心持ちや応援するチームのポジションにもよるだろうが。
そんな3月の初戦を戦うのは、上位で4月以降をにらむU-NEXT PiratesとKADOKAWAサクラナイツ、中位からの浮上を狙う渋谷ABEMAS、そして最下位に沈むEX風林火山。
第1試合
東家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
西家:渋川難波(U-NEXT Pirates)
東1局1本場は、白鳥が役牌から仕掛けて2フーロ、早々にテンパイを入れた。ドラが雀頭で打点も3900とそこそこ。
直後に手番を迎えた亜樹がふくれっ面。
1シャンテンながら真っすぐ手を進めれば白鳥に打ち込むところだったが、ここは雀頭の字牌をトイツ落としして迂回。2つ鳴いている白鳥がトイツ落としを見せており、すでにテンパイと考えたのだろう。自身の手に打点がないのもあるだろうが、このあたりは冷静だ。
手が進んだ渋川も、アガリに向かうにはいずれドラを打たなければならない。現状ではそこまでのリスクに見合う手ではないということで、こちらも守備的な進行。
一方、優は赤を引き入れて形も打点も見違えるようになったことから、ソーズのペンチャンターツを外していく。ただ、もう一手進んだときに出ていくのは白鳥のロン牌。やはり先制テンパイの白鳥が圧倒的有利に見えたが、
そこへ、一度はブレーキをかけた渋川が再度アクセルを踏み込む。
10巡目にいったんは留めたドラをリリース。手牌を見ればソーズピンズを引き入れて、345のタンヤオピンフ三色まで見える形になっている。これならば、ドラ切りのリスクにも見合うという判断。
もちろん門前でテンパイするのがベストだが、愚形を解消して好形テンパイが取れるなら良し。カンチャンチーで白鳥に追いついた。
優は2人に通っていない無スジを引くと、あっさりと1シャンテンを崩した。戦闘民族と言われているが自身は1シャンテン、相手2人がテンパイと読むなら、好き好んで不利な勝負を挑むような打ち手ではない。
亜樹も完全に店じまいとはしておらず、残した牌にうまくくっつけて1シャンテンまで戻ってきていた。
ポンしてテンパイ。
ピンズの上目は見えている牌が多く、やや打ちやすい。
さらに、まわっていた優もチーを入れて手を進めるが、
リャンメンターツを外し、亜樹の切ったピンズを合わせる。安全を確保しながら、あわよくばテンパイできればという構え。
亜樹は最終手番で待ちをリャンメンに変えられたが、そのままカンチャン待ちを続行。そもそもアガリがほとんどない状況で、通っていないソーズ無スジは押さない。
アガリが出ないまま迎えたハイテイ手番で、白鳥が持ってきたのは亜樹のロン牌だった。
1牌押してテンパイを取りきれれば加点でこの局を終えられる。親の優は最終手番で少考から全員の現物を手出ししており、ノーテンは濃厚。
であれば、オリても1人ノーテンはない。白鳥は安全策を採った。
渋川・亜樹の2人テンパイで流局。アガリもなく、ダイジェストには入らない地味な1局だった。それでもあえて観戦記で取り上げたのは、各者の押し引きが興味深かったこともあるが、何よりもこの局がこれから迎える3月の戦いを象徴しているように思えたからだ。こういうジリジリとした、各者が諦めない戦いは、きっと最後の最後まで続くのだと思う。
ゲームは次の局から大きく動きだす。亜樹がドラドラ赤を抱えての役ありテンパイをダマテン。この手をリーチと踏み切りそうな打ち手はMリーグでも何人か思い当たるが、「ダマテンにしそうなのは誰か」と言われれば、亜樹は1番手か、それでなくとも早い段階で名前が挙がりそうな選手である。
親の白鳥からリーチがかかるも、亜樹のロン牌がリーチの現物になっていた。これが優から出て、満貫の出アガリを決める。
南1局1本場、亜樹はイーペーコードラドラを今度はリーチの選択。トップ目から大量加点を狙いにいく。