特別投稿【EX風林火山 IKUSA自戦記】負けIKUSA 文・ZERO / 沖中祐也

将来が変わるかもしれない戦い。
自分の読みと想いを牌に乗せ、バチバチに殴り合う。

…つもりだったが、勝ちたいのはみんな一緒。
私はこの日防戦一方で、-79.9を叩いてしまった。

二日目 あの男がいた

品川のカプセルホテルに一泊し、連日でHOLICに向かう。
IKUSAは地方在住者にも参加しやすいように配慮されており、日程の自由度が高かった。
連戦となるように日程を組めるのだ。

二日目、明らかに異質のオーラを放つ男が上家に座った。
スラッとした体型、パリッと決めたスーツ、そして切れ長の目…回ってきた成績表に書いてある名前を見て、サウナに10分入ったときと同じくらい心拍数が上がった。

田口淳之介

近年プロ入りした、元KAT-TUNの超有名タレント。
その田口プロはインフルエンサーポイントが+90.0ある。
対局が始まる前からすでに大きな差がついているのだ。

「この人だけには負けたくはない」

そういった負の感情が湧いてこないといったら嘘になる。

自堕落で決して褒められない、社会から逸脱した人生を送ってきた私だが、中学生の時に麻雀を覚えてから30年以上もの間、ずっと麻雀牌と共に過ごしてきた。
どれだけ有名だろうが、イケメンだろうが、卓上(ここ)だけは譲れない。

対抗意識バリ3立てて卓に付いたが、戦いが始まってその思いはすぐに霧散した。

田口さんも、必死なのだ。
おそらく何千人ものファンが集まる前でライブを行ってきたであろうその男が、手を震わせている。
関連リンク:【EX風林火山 IKUSA】田口淳之介インタビュー

牌を交えるだけで勝ちを渇望している想いが、そして麻雀に対する愛が伝わってきた。

さらに負けた。
それも圧倒的に。
ぐうの音も出ないほど。

田口さんは牌に恵まれたのもあるが、とにかく攻めていた。
親の田口さんから中盤すぎに超怪しい捨て牌でリーチが入る。

「ツモ」
最終盤に開けられた手牌は

「6000オール」
1枚ずつ切れているシャンポン待ちだった。

勝ち切るレギュレーションだから、リーチする人もいるかもしれないが、勝ち切るためにはトップが必要なわけで、数少ないチャンスを確実にものにするためにダマテンに構えるのが普通の感覚だと思う。

それでも田口プロは堂々とリーチを打った。
そして全員をおろし、決定打を決めた。

なお別の日には、やはりドラをたくさんかかえたメンホンリーチを打って、親の三倍満をツモっている。

(藤島じゅんさんのMリーグほぼ毎日4コマより)

あとは突然始まった田口淳之介のワンマンライブを眺めることしかできなかった。

順調に6000オールを重ね、阻止しようと手を出した人が12000を放銃する。
ふと田口プロの点数を見ると115000点に達していた。
これはMリーグにおける黒沢さんのレコード(112700点)を超えている。

さすがにそれは阻止せねば、とかなり下方修正された目標はなんとか達成。
110000点のトップに抑えた。

もし、田口プロがMリーガーになったら俺のおかげと吹聴しよう…「わしが育てた作戦」だ。
始まる前の威勢はどこへやら、作戦を切り換えざる得ないほどに点棒を献上したものの、私はこの日のスコアを少しのプラスでまとめることができた。

改善案

半月ほど経って、3日目4日目の戦いが行われた。はっきり言って通算マイナスの私にとっては、ほぼ消化試合である。

いやほとんどの打ち手がいわゆる目無しになっていた。準決勝進出となるボーダーが350を超え、+200以下となるともう厳しい。

そんな4人は目標がないまま麻雀を打つことになる。麻雀プロというのは、アメちゃん1つでも何か目標・条件があれば打つことができるのだが、それがなくなると途端に戸惑ってしまうものだ。

中には目無しの4人が示し合わせたように高速で打ち、3時間もかからず4半荘を終えたこともあったという。

この虚無の半荘はできれば避けたい。
どうしても目無しは生まれてしまうものの、なるべく減らすべきだと思うのだ。
代替案としては200人→8人まではトーナメントにするというもの。
これなら5回で8人まで絞れる。

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