【 #神域リーグ2023 第二節第5試合観戦記】元気な「こんもこ」が聞きたい 進む先は苦難の道 それでも咲乃もこは歩き続ける【文 #後藤哲冶 】

緑仙から先制リーチが入る。
続けざまに、ルイスからも。

「知るか……っ! 」

天開は一言で切って捨てた。

緑仙から出た【白】をポン。

もう退路はない。思わず投げ出したくなるほどの配牌を、ここまで育てて見せた。
南場の親番で勝負手が入ってくれるとは限らない。
チームの苦しい状況を打開するために、天開は超危険地帯に躍り出た。

――勝負。

その勝負の最中、困ったのは咲乃だった。
安全牌が、無い。

「……これ何切りだ?」

親の天開が全力で突っ込んできているのは理解している。
リーチ者の2人を含めて、同時に3人の河を読み込まなくてはいけない。

画面上ではわからなくとも、モニターの前に座る咲乃の額に、汗が滲むのを感じた。
必死に整理する。比較的安全なのは2巡凌げて字牌の【東】だが、リーチ者の2人は河に字牌が少なく、数牌がかなりの数余っており、字牌は危険に見える。

導き出したのは【9マン】。これに声がかからず、咲乃は僅かに安堵する。
しかし、それも束の間の安心。

この一巡で安全牌が増えることはなかった。
そして持ってきたのは危険牌の【4ピン】
依然として、手牌は危険牌だらけだ。

「しんどい……無い……っ!」

悲痛な叫びと共に咲乃から打ち出された牌は。

「それだ……! こっからじゃ!」

天開のアガリ牌、【東】だった。
12000のアガリ。
あの配牌から12000の加点に結びつけた天開の手組は、見事と言う他ない。

しかしそれでも、試合が終わり、控室に戻った咲乃は、この放銃を悔いていた。

「天開さんが【3マン】【4マン】のリャンメンを外してるのは見えてて……【東】は危ないと思ってたのに」

【9マン】を切った後、実は手の内の【6マン】が中スジになっていた。
たしかに【3マン】【4マン】という両面を外している天開に、【6マン】は限りなく当たりにくい。

【6マン】選べるなぁ、選べるよ……!」

悔しさに濡れた言葉が、咲乃から紡がれる。
しかしこの大舞台で、20秒という時間制限があって。
その正解を導き出すことは、決して容易ではない。
それでも、これは自分のミスだと言い切り、もっと強くなりたいと願う咲乃だからこそ、応援したくなる人も増えるのだろう。

対局に戻ろう。

東3局1本場だ。

大きな放銃となった後も、咲乃は冷静だった。
……いや、必死に抑え込んで冷静さを保っていた、という方が正しいかもしれない。

【東】をポンして、イーシャンテン。
【東】ホンイツドラの8000点に向けて、咲乃が邁進する。
対局中の気持ちの切り替えは、本当に難しいものだ。
それでも、咲乃は必至に最善手を探し続ける。

加点に成功した天開も、まだまだ黙っていない。
【赤5ソウ】を引き入れて、リーチ。まだこんなものでは足りないのだ。
チームの負債を返済するためには、まだ。
これをツモって、トップ目にたって、ようやくそこがスタートライン。
天開の心が燃えている。

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