緑仙から先制リーチが入る。
続けざまに、ルイスからも。
「知るか……っ! 」
天開は一言で切って捨てた。
緑仙から出たをポン。
もう退路はない。思わず投げ出したくなるほどの配牌を、ここまで育てて見せた。
南場の親番で勝負手が入ってくれるとは限らない。
チームの苦しい状況を打開するために、天開は超危険地帯に躍り出た。
――勝負。
その勝負の最中、困ったのは咲乃だった。
安全牌が、無い。
「……これ何切りだ?」
親の天開が全力で突っ込んできているのは理解している。
リーチ者の2人を含めて、同時に3人の河を読み込まなくてはいけない。
画面上ではわからなくとも、モニターの前に座る咲乃の額に、汗が滲むのを感じた。
必死に整理する。比較的安全なのは2巡凌げて字牌のだが、リーチ者の2人は河に字牌が少なく、数牌がかなりの数余っており、字牌は危険に見える。
導き出したのは。これに声がかからず、咲乃は僅かに安堵する。
しかし、それも束の間の安心。
この一巡で安全牌が増えることはなかった。
そして持ってきたのは危険牌の。
依然として、手牌は危険牌だらけだ。
「しんどい……無い……っ!」
悲痛な叫びと共に咲乃から打ち出された牌は。
「それだ……! こっからじゃ!」
天開のアガリ牌、だった。
12000のアガリ。
あの配牌から12000の加点に結びつけた天開の手組は、見事と言う他ない。
しかしそれでも、試合が終わり、控室に戻った咲乃は、この放銃を悔いていた。
「天開さんがのリャンメンを外してるのは見えてて……は危ないと思ってたのに」
を切った後、実は手の内のが中スジになっていた。
たしかにという両面を外している天開に、は限りなく当たりにくい。
「選べるなぁ、選べるよ……!」
悔しさに濡れた言葉が、咲乃から紡がれる。
しかしこの大舞台で、20秒という時間制限があって。
その正解を導き出すことは、決して容易ではない。
それでも、これは自分のミスだと言い切り、もっと強くなりたいと願う咲乃だからこそ、応援したくなる人も増えるのだろう。
対局に戻ろう。
東3局は1本場だ。
大きな放銃となった後も、咲乃は冷静だった。
……いや、必死に抑え込んで冷静さを保っていた、という方が正しいかもしれない。
をポンして、イーシャンテン。
ホンイツドラの8000点に向けて、咲乃が邁進する。
対局中の気持ちの切り替えは、本当に難しいものだ。
それでも、咲乃は必至に最善手を探し続ける。
加点に成功した天開も、まだまだ黙っていない。
を引き入れて、リーチ。まだこんなものでは足りないのだ。
チームの負債を返済するためには、まだ。
これをツモって、トップ目にたって、ようやくそこがスタートライン。
天開の心が燃えている。