【 #神域リーグ2023 第4節第12試合観戦記】神域の夜空に、大三元の煌めき その奇跡の裏 空星きらめは 歩みを止めなかった【文 #後藤哲冶 】

咲乃は【9ピン】を切ってテンパイを取り、ダマテンに構える選択をとった。
これなら役アリでアガることもでき、三色の手変わりを待つこともできる。
もちろん、巡目が進んで天開に厳しい牌を持ってきたらオリることもできる。

上級者であればあるほど、後の選択をできるこういったダマテンの選択肢は、アリなのだ。

そしてその咲乃が切った【9ピン】に食いついたのが、白雪。

「こんなのはノータイム」

そう呟いた白雪もまた、紛れもない実力者。
安牌は【8ピン】だけで、オリきれる保証もない。であれば4pでアガれる可能性を残した方がマシ。
攻撃は最大の防御。
失点を無くす方法は、自らがアガることだ、と白雪はこれまでの神域リーグで証明してきた。

天開と白雪の激しい鍔迫り合いの中、咲乃も絶好の【2マン】を引き入れた。
しかし、三色のテンパイにとった場合、出ていくのは、天開にも白雪にも通っていない、ダブル無スジ【2マン】【5マン】だ。

「強気に」

咲乃が選んだのは、【5マン】切りのダマテン
ここまで散々苦しい想いはしてきた。だから少し、ワガママになったっていいじゃないか。
タンヤオ三色のテンパイ。これでダマでも7700から。

この3者譲らぬテンパイの行方は――

咲乃に軍配!
【6ピン】をツモり上げ、更に4000オールの加点。
東発とはいえ5万点超えのリードは大きい。
これで咲乃が、初トップに向け歩みを進める。

――そして奇跡は、突然やってきた。

続く3本場。空星きらめの第1ツモは、【白】

「頑張っちゃおうかな?」

俄かに匂いたつ、役満の香り。

白雪から出た【白】をポンした後、すぐに咲乃から中をポン。
まずは役2つを確定させる。
この三元牌2つの鳴きは、相手にかけるプレッシャーも大きい。

そしてその、直後。

「あー……最高です」

絶好の、【發】引き。
ほのかに香っていた役満の香りは今や強烈に輝きを放っている。
この手は、役満なのだ、と。

「それは流石にちょっと……聞いてないかなぁ……!」

トップ目に立っている咲乃も、気が気ではない。
東をポンして、カン【4ソウ】のテンパイ。打点がどうとか、言っている場合ではない。
今はとにかくこの窮地を脱することが急務だ。

「ヤバすぎるだろ……」

早々に発を掴まされたのは、天開。
ため息にも似た空虚な笑いが響く。
これはどうすることもできない。発を引いて復活できる道を探る。

――神域の夜空に。”三つ”の星が輝いた。

「やったー! やったよ皆ー!」

役満大三元成就。
僅か、8巡の出来事だった。

ヘラクレス応援控室は狂喜乱舞。
松本監督の姿は頑張ってスクリーンショットしないとブレてしまう。

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