浅井がを引いて、切り。
一旦テンパイだが、これでは条件達成にならない。リーチ棒が出てくると満貫ツモ条件になるので、誰かがリーチをかけてくれるのを待つか、ピンフの手変わりを待つ。
狙い通り、形上アガリ牌のを引き入れて、切りのフリテンリーチ。
これならばツモ裏1で条件クリアだ。
苦しい配牌から丁寧に手を進め続けた竹内が、追い付いた。
ピンフのみの待ち。これをアガり切れば、竹内の通過。
親番の柴田も追い付いた……!
なんと待ちは、竹内と同じ。
もももう山にはない。
柴田浅井竹内の3人で、のめくり合い。
竹内はもちろん、リーチ棒が出たことで浅井もをツモった時点で通過確定だ。
場が沸騰する。
必死に手を伸ばす。
残されたは2枚。
決勝卓への切符は、3人の手が届く所にある。
最後の、めくり合いは――
浅井が、劇的な勝利を収めた。
竹内は、じっ、と。
その牌姿を。自分がツモれなかったを。
最後まで見つめていた。
決勝卓に進出を決めたのは、忍田幸夫・浅井堂岐の2名となった。
決勝卓も素晴らしい対局内容だったので、是非そちらの記事にも目を通してもらいたい。
記事の内容で聞きたいことがあったので、私は竹内に連絡をとった。
対局直後の忙しい時間であるにも関わらず、竹内は快く連絡を許可してくれた。
やはり話を聞いていても、自分がアガれない時に何をするべきかを竹内は常に考えていた。
アガリ無しでオーラスまで通過ポジションにいたことは、もちろん展開もあるが、竹内の局全体を見通す力が少なからずあったと思う。
「色々あったけど、とのシャンポンツモれてれば、また展開変わったと思うんだけどね」
確かに、東4局のあのリーチをツモれていれば、満貫の加点になり、またオーラスは違った展開になっていたかもしれない。
狙いのが2枚あったことを考えれば、あれは是が非でもアガりたかったリーチだった。
「だってさ、後藤ちゃんも思ったでしょ? 」
「このイーソー、いそーだって! 」
……相変わらず、全然面白くないけれど。
この陽気で、気さくで、けれど麻雀中は最高にカッコ良い、そんな大きな天才が。
もっともっとたくさんの舞台で活躍している姿を見たいと、心から思う。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924