この時もしかすると、今まで受けてきた不運の数々が、朝陽の脳裏をよぎったかもしれない。
ダマにしても、仕方ないと、思った。
「ここで日和ってるのは本当に良くない。 ひよ、らない……!」
それでも。朝陽はリーチ、と力強く宣言。
トップは、自分の手で決める。
嫌な記憶も振り払って、朝陽は自分の麻雀を貫くことを選んだ。
どれだけの不運に見舞われても、いつも通りを貫く。
言葉にすれば簡単だが、これは決して容易ではない。
そしてその心意気に、必ずしも牌が応えてくれるとは限らない。
けれど。
今日この時に限っては、朝陽の姿勢に麻雀の神様が微笑んでくれた。
4着に緑仙。ことごとくリーチは空振り、リーチ後に放銃してしまうシーンが目立った緑仙。
それでも、インタビューで監督の松本から「次もいけるか?」と聞かれた際には、「もちろんです」と力強く言ってみせた。
第14試合の緑仙の戦いぶりも記事で描くつもりなので、是非そちらも目を通してほしい。
3着にルイス。序盤リードしただけに、3着は少し不満か。
けれど堅実に打ち続けるルイスの安定感は、随所に見えたように思う。
2着に、白雪。
オーラス、最後まで白雪はトップを狙っていた。
白雪の左端に浮いている。実は朝陽の当たり牌だったのだが。
三色が崩れたこのテンパイではは打たない。
あくまで狙いはトップ。
そして最後にはこのドラ単騎リーチ。
実りこそしなかったものの、白雪の執念すら感じる麻雀には、興奮せずにはいられなかった。
また残りの数節でも、白雪の麻雀を観戦記で書くことがあるだろうと、私は確信している。
嬉しい嬉しい初トップは、朝陽にいな。
試合後は、喜びの声を聞くことができた。
それでもすぐに、「検討するべきところはたくさんあった」と口にする辺り、麻雀に対する真摯な姿勢が見え隠れしている。
これからも、グラディウスを牽引する打ち手になってくれるだろう。
――前節、どれだけの不運に見舞われても、折れない朝陽は美しい、と綴った。
けれど。
最後まで自分の麻雀を貫き、満開の笑顔を咲かせた朝陽は。
それよりも更に、美しく輝いていた。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924