苦境を越えて、
松本吉弘の逆襲
文・喜多剛士【木曜担当ライター】2025年10月30日
今夜の対局に臨む4人は、チーム状況も個人成績も大きく異なる。苦しむ者、勢いに乗る者、そして背負う者。それぞれが異なる立場から卓に向かう。ここからどんなドラマが生まれるのか、注目の一戦だ。
今シーズン、▲144.3ptと昨季に続いて苦戦中の松本吉弘(渋谷ABEMAS)。試合前には「ここから200ptまで稼ぐ」と前向きなコメントを残しており、巻き返しに向けた強い意志が感じられる。
トータル▲188.7ptと厳しい戦いが続く茅森早香(セガサミーフェニックス)。今季からは監督兼任となり、低迷するチームを自らの手で救いたいという覚悟がにじむ。
なかなかトップを取れずにいた伊達朱里紗(KONAMI麻雀格闘倶楽部)も、ここにきて2連勝。ようやく本領を発揮し、勢いに乗り始めた。
好調な赤坂ドリブンズを支える浅見真紀は、連続トップの後、前回は2着。それでも安定した加点を続けるポイントゲッターとして、今回もチームに貢献したいところだ。
それぞれの想いが交差するこの一戦。
誰が流れを掴み、誰がその手をすり抜けるのか注目したい。
第1試合
東家:松本吉弘(渋谷ABEMAS)
南家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
西家:伊達朱里紗(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:浅見真紀(赤坂ドリブンズ)
東1局
静かに始まった東1局。
4巡目、浅見の手にドラの
が重なる。手牌は一気に勝負手へと変貌する。好調者にふさわしい、流れを引き寄せるような展開だ。
浅見が放った
に、親の松本が3シャンテンから仕掛けを入れる。![]()
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の二度受けから
をチーし、2シャンテンへと進行。
678のタンヤオ・三色・ドラで5800点の打点も見えるが、親番を継続したい意図が強く、やや遠い仕掛け。この仕掛けをきっかけに、場面は大きく動き出す。
次巡、浅見が絶好の
をツモ。両面ターツが2つ残るイーシャンテンとなる。まるで不調の松本の仕掛けが、好調者にツモを流したかのようなオカルト的な展開。不調者が好調者に風を送る、そんな瞬間だった。
浅見は無駄ツモなく
を引き入れ、![]()
待ちでリーチ。山には5枚。アガリの気配は濃厚なテンパイ。
そして難なく
ツモ。2000-4000のアガリ。今シーズンの好調者と不調者、その明暗がくっきりと分かれた1局だった。
東2局
浅見が早々に
を仕掛ける。トイツが3つと門前ではテンパイに時間がかかり、仕掛けた後でも両面2つを残しつつ、
・
という仕掛けやすいトイツを抱えた進行は、まさに“加点した者の余裕”が見える。
そして松本の手から放たれた
を浅見がポン。両面ターツが2つ残るイーシャンテンとなり、先に埋まって欲しい部分が完成する理想的な展開。
しかし、ここで松本が
を引き入れ、![]()
の好形テンパイ。好調者の仕掛けが流れを呼び、不調者に好形テンパイが舞い込む。オカルト的には裏目に出やすい展開だが、果たして今回はどうか。
浅見は一度
を止めるも、
を引いてテンパイ。そして、ついに
を放ち、松本の手に飛び込む。
リーチ・タンヤオ・イーペーコー・ドラ2で8000点。松本は東1局の嫌な流れを断ち切る見事なアガリを決めた。
東3局
5巡目、茅森が
を引き入れてイーシャンテン。余剰牌はドラの
と
。打点を追えば
、形の安定を取れば
。あまり長くドラの
を抱えるのも危険が高い。
と
のトイツがあり、好形変化の
と索子の一通を見て、打
東を選択。
その裏で、前局8000点の加点を決めた松本が、タンヤオ・三色のテンパイ。ここはダマを選択。
茅森の
は、くっつき候補として残されていたが、松本の待ち牌となってしまった。
にくっついて安全牌の
を連打する進行になれば助かるが、引いたのは
。迷いなくリーチを宣言。
放たれた
が松本の待ちに飛び込み形となりタンヤオ・三色、5200点。
安全度と好形変化で残していた
が痛恨の放銃となり茅森に苦しい展開となった。
東4局
苦しい展開が続く茅森に、ようやく光が差し込む。5巡目、
を引き入れて暗刻が2つの四暗刻2シャンテン。
その直後、松本の仕掛けで
が流れ、茅森は四暗刻イーシャンテンへ。
だが、先制のテンパイを入れたのは浅見。
を引き入れ、チートイツで
か
待ち。場には
を伊達と松本が放ち、茅森は
を切っていて
が良さそうに見えるが、浅見が選んだのは
。
が1枚切られているので見た目枚数での選択だった。















