苦境を越えて、松本吉弘の逆襲【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 10/30 第1試合(麻雀LIVEチャンネル)】担当記者 喜多剛士

次巡、松本がカン【7ピン】で追いつき2軒のテンパイが入る。伊達が【8ソウ】をツモ切りし、浅見はアガリを逃す形となった。卓上には、四暗刻イーシャンテンの茅森、テンパイの松本と浅見。

そして、茅森がつかんだ【7ピン】が松本の手に飛び込む。タンヤオ・ドラで2000点のアガリ。トップ目の松本にとっては、加点と局進行の両面で嬉しい一撃となった。

 

南1局

この局の主役は伊達。4つの対子でチートイツを見ながらの進行だったが、【1ソウ】が暗刻となったことで手牌が一変。ここで選んだのは【發】。ネックだった対子が暗刻になったことで、ホンイツを強く意識した構えだ。風牌の【西】を仕掛けた場合、トイトイに変化しなければ打点は伸びない。だからこそ、【7ソウ】やドラの【白】が重なったときに勝負手へと変化できるよう、可能性を広く残す。ホンイツ、ドラドラ、トイトイのすべてに網を張り巡らせる、伊達らしい欲張りな構想が光る一手だった。

【西】をポンして1300のイーシャンテンには取らず、【9マン】を外してホンイツへ。ドラの【白】をいつ切るか、そのタイミングは難しい。だが、ギリギリまで踏み込むその姿勢に、攻めの美学が見える。

そして【2ソウ】をポン、さらにドラの【白】を重ねてテンパイ。

最後は【3ソウ】をツモって、ホンイツ【西】・ドラ2の2000-4000。

よく「伊達ちゃんは強運」と言われるが、それは打点に振り切った構想と、それを実現する打ち回しが見事に噛み合った場面の印象が強いからだ。良い牌が来たときに、確実にものにする打ち方をしているから“強運”のように見えるのだ。

運は、ただの偶然じゃない。狙い、踏み込み、そして掴み取るもの。それを見事に証明する1局だった。

迎えた南4局オーラス。松本は伊達に対してわずか200点のリードで、両者のアガリ競争に。一方、茅森は跳満ツモでようやく着順アップという、厳しい条件下での戦いとなった。

松本はイーシャンテンから、鳴いてタンヤオのパターンの多い打【9マン】と受入枚数が多い打【5ピン】の選択で受入枚数の多い【9マン】を残して打【5ピン】とした。

【2ピン】を引いて打【9マン】。受け入れ枚数だけを見れば打【3マン】が有利だが、萬子の下が伊達に対して危険と読み、あえて【9マン】を選択した。

実際、伊達の手にはペン【3マン】のターツが残っており、松本の的確な読みと判断力は、まさに見事と言うほかない。

そして【3ソウ】を引き入れ、【1ピン】【4ピン】のテンパイ。勝負の形が整う。

そこへ茅森が追いつきテンパイ。一発や裏ドラが絡まなければ着順は変わらないが、素点も大切と見てリーチを選択。

浅見は、茅森に満貫を放銃すればラス落ちという状況。そこで一旦、リーチ者の現物である【1ピン】を対子で外し、迂回を試みた。だが、その【1ピン】が松本の待ちに飛び込んでしまう。

ピンフの1000点は1300点に。わずかな差を守り切った松本のアガリで、静かに終局を迎えた。

 

それぞれ異なる立場で卓に向かった4人。苦戦中の松本、監督兼任で奮闘する茅森、連勝で勢いに乗る伊達、そして安定感ある浅見。今夜の対局は、そんな4者の思惑がぶつかり合う一戦となった。

序盤は浅見が好調者らしい滑り出しを見せたが、松本が中盤以降に流れを掌握。冷静な押し引きと的確な判断で、苦しい状況を跳ね返す展開に。

茅森は勝負どころで、あと一歩届かない場面が続いた。伊達は持ち味の打点構想を貫き、存在感を示す一撃を決める。

そしてオーラスでは、わずか200点差のアガリ競争。最後まで緊張感の途切れない展開の中、松本がわずかな差を守り切り、勝利を収めた。

読み、構想、そして一打の重み、麻雀の奥深さがにじむ熱い一戦だった。

 

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