【 #神域リーグ2023 第5節第13試合観戦記】神域の空に、朝郎（ぼら）け艱難辛苦乗り越えた先で朝陽にいなは【文 #後藤哲冶】

どこまでだって行こう。
グラディウスが背負った不運を考えれば、まだ足りない。
その槍で、天高く貫いてしまえば良い。

南２局はルイスが緑仙から8000点をアガることに成功。
テンパイだった緑仙は一発でルイスのアガリ牌を掴む運の無さ。親番も落ち、厳しい状況に追い込まれる。

さあ、あと２局。
自分の親番はこのまま行けばほぼ捲られないこともあり、実質あと１局。
苦しかったグラディウスと、自分自身に持ち帰る初トップは、もうすぐそこに――

冷たい季節外れの雪が、朝陽の足を絡めとった。

ここまで沈黙を保っていた白雪の、7700が炸裂。
遅れてやってきたダークヒーローが、朝陽の足をゴール手前で摑まえる。

朝陽の持つ点数を考えれば、まだ焦るには早い。
早いが。親の白雪にアガられてしまったことで、南３局は続く。１本場だ。

リーチを打つために、朝陽はここで打。
の暗刻も逃さない、リーチを打つことに全て振った構え。
が、これは少しいつもの朝陽らしくないと言えるかもしれない。
局の最初、「をくっつけてのピンフは最高」と朝陽は言っていたのだ。
ここでそれを手放し、リーチを打つ体勢に入ってしまった。

できれば、リーチを打って白雪に追いかけられる展開は避けたい。
だからこそ、ここはを切ってのくっつきを見たいシーンだった。

そしてその、ほんの僅かな焦りに、痛烈な一撃を放ってくるのが、白雪レイドという打ち手。
巡目が深くなってきた３段目、白雪はメンホンチートイツ赤というダマでも18000点の超大物手を仕上げてきた。
これをアガれば、ほぼ並び。

「まだ終わらせるにゃはええかなぁ？」

大胆に、力強く。
自力でツモって見せた。
この6000オールで、一気に白雪が朝陽に迫る。

続く２本場も、緑仙から3900をアガって連荘。
ついに朝陽と同じ４万点台にまで乗せてきた。

先ほどまで感じていた春の陽気は消え失せ、卓上には冷たい風が吹き抜けている。

「自分でアガリに行った方が早い、か」
冷たい空気が張り詰める中、朝陽が必死で歩を進める。

朝陽の立場的には、ルイスや緑仙がアガってくれるのもＯＫだ。
しかしこれほどまでに追い付かれてしまった以上、自分でアガらなければ大体のケースでオーラス白雪の条件が残る。
ならばこそ、自力でアガって白雪との点差を離したい。

朝陽の手が伸びる。
これでとのチーで一気通貫のテンパイも組めるようになった。
リーチして白雪との直接対決はもちろん嫌だし、この状況だとルイスや緑仙に追いかけられるのも好ましくない。
放銃で白雪の下に行ってしまう可能性があるからだ。

しかし、引いてきたのは、。
これだと、リーチをしなければ役が、無い。

朝陽の手が、リーチのカーソルに伸び……戻す。

何を迷っているんだ、と思うかもしれない。
しかし、麻雀をやればやるほど、このリーチは怖いと思ってしまう。
まず、このは通常のリャンメンより良くない。何故なら自分で１枚使ってしまっているからだ。
そしてドラ表示牌含め既に場に３枚見えてしまっている。つまりは、見た目枚数だけで言えばペンチャンやカンチャンと同じ４枚しか残っていないということなのだ。