再び風見に訪れる選択。
またしてもリーチを受けてから、テンパイ。
しかし今度は打点がある。
「もう全然わかんないです!」
悲鳴にも似た叫びが、風見から吐き出される。
これくらいアガれたっていいじゃないか。
ここまでリーチを貫いて、最後まで戦い続けた風見に救いがあったっていいはず。
なのに。
風見に、麻雀の神様はどこまでも厳しかった。
オーラス南4局へ。
風見の手には、ダブが対子。
それが、多井の手から出てきた。
「ポンは……していい、のか……」
その声はもう既に、か細く、嗚咽が混じっているようにすら聞こえる。
鳴いたっていい。鳴かなくたっていい。
誰も君の選択に、異を唱える人なんていないのだから。
風見はポンを選んだ。
もう既に、着順アップの条件はない。
ならば、少しでも点数を、取り返したい。
突きつけられた現実は、あまりに厳しかった。
それでも。
その8000点は。
その8ptは。
――グラディウスの、風見くくの、明日に繋がる、8ptだと信じて。
3着は桜凛月。かわし手がとても上手くハマったものの、勝負手がなかなか入らず。
ゼウスは343と厳しい1日になってしまった。
2着に、多井。今シーズン初参戦となった多井は、トップこそとれなかったものの流石の2着取り。
去年の悪しき記憶を払拭し、自身神域リーグ初の2着。
1着は、空星きらめ。
本記事中でも紹介したように、もはや貫禄すら感じる素晴らしい打ち回し。
勉強熱心な姿勢に自信までついてきて、もはや向かうところ敵なしか。
4着に、風見くく。
ポイントをプラスすることは、かなわなかった。
検討配信では、監督である渋川も、チームメイトの2人も、そしてコメント欄も。
全員があたたかい言葉を風見にかけていた。
姿勢は、決して悪くなかった。教えられた、リーチを打つ姿勢は、貫いて見せた。
それは、何よりも得難い経験だから。
正直、ここまでの仕打ちを受けて、風見が麻雀を嫌いになってしまわないか心配になった視聴者は、私だけではないと思う。
もっと簡単にアガれる手が入ってくれたっていいじゃないかなんて思ったのは、1度や2度ではない。
しかし、そんな心配をよそに、風見は、立ち上がっていた。
零れた涙は、強く拭った。
どれだけ、厳しい結果が待っていようと。
運に見放され、運命に苦しめられようとも。
――嫌いになんて、なってやらない。
いつか心から笑う、その日まで。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924