復活の
レジェンド
馬場裕一
Mリーガーを
相手に見せた
昭和の手役麻雀
【A卓】担当記者:東川亮 2021年11月14日
麻雀最強戦「ザ・リベンジ」は、その年の麻雀最強戦で悔しい思いをした者に対し、リベンジの機会として設けられた大会。昨年はここを勝った多井隆晴が一気に最強位まで駆け上がっている。もちろん、各自がその再現、自らが最強位になることを狙っているのは間違いない。
佐々木寿人・白鳥翔・小林剛。彼らについてはもはや特に紹介する必要もないだろう。麻雀界を代表するトッププロ、Mリーガーであり、今年の麻雀最強戦で悔しい負け方をした者たちだ。ただ、彼らとは全く質の異なる「リベンジ」に挑む人物がいる。
A卓最後の一人、馬場裕一。
プロ団体に所属しないフリーの立場から、原稿執筆や放送対局の企画・解説など、麻雀のメディア露出において尽力し続けてきた麻雀界の大功労者である。打ち手としては「メンチンのバビィ」として名を馳せ、2017年には麻雀最強戦ファイナル決勝まで進出。優勝した金太賢、現最強位の多井隆晴、今年のファイナルにも出場する猿川真寿と激闘を繰り広げた。
https://twitter.com/biglipbabby/status/1379377585306632192
馬場は、今年4月に行われた「男子プロ一撃必殺」への参戦が決まっていたが、がんを患い、闘病のために辞退した。つまり、馬場は戦って敗れることすらできなかったのである。
命すら脅かされかねない大病。しかし、馬場はそこから最強戦の舞台に、打ち手として舞い戻ってきた。
馬場さんが元気に麻雀を打っているところを見られるのが、本当にうれしい。そして願わくば、Mリーガーと真っ向から戦い、なんならやっつける姿が見たい。この組み合わせを見たときの、筆者の偽らざる思いだ。
登場時には、対戦する3名のMリーガーに敬意を表してか、それぞれの所属チームのポーズを決めた。
東2局、馬場がらしさを見せる。トイツ落としからカン待ちテンパイ。既に9巡目、タンヤオで出アガリできるため、リーチはともかくいったんテンパイを取る打ち手も少なくはないだろう。
馬場はテンパイ取らずカンターツ外し。ピンズが伸びればタンヤオピンフ三色まで見えるだけに、ここは先の変化を見た。
そこからと引き、テンパイ復活。ならタンヤオピンフでそこそこの打点のリーチを打てるが、引きでは手役がない。ただ、巡目は半分を過ぎている。
取らずのツモ切り、徹底して手役を見る。この局は白鳥のアガリとなったが、なんとも印象的な馬場の打ち筋である。
そしてさらに凄まじい選択を見せたのが、自身の親番である東4局。馬場は第1打にからの切りを選んだ。馬場は基本的に第1打で字牌を切らない打ち手だが、いきなりのリャンメン固定はかなり思い切った一打だ。
5巡目で引き、2メンツが完成した。みなさんなら、ここから何を切るだろうか。個人的にはかあたりを払っていきたい。
馬場はなんと、出来メンツからを切った。しかもほぼノータイムである。確かにこの手をチャンタ系、MAXをジュンチャン三色と見るならば、は最もいらない牌である。それでも、ここからメンツを壊してまで手役を見る打ち手が、現代麻雀においてどれだけいるだろうか。しかも自身の親番で、だ。
馬場の狙いにツモも呼応する。→→と立て続けに引き入れ、あっという間にチャンタ、ジュンチャンの1シャンテンまでたどり着いた。こんな麻雀、昨今の放送対局ではまず見られない。
だが、それをやすやすと許すほど、現役世代は甘くない。白鳥がリャンメンチーからテンパイし、あっさりと3900を出アガリ。やはり、馬場の手役狙いの麻雀がテンパイまでの速度で劣ることは否めない。
馬場はどこまでも好形・高打点を追う。南2局、5巡目で三色の1シャンテンとなっていたところにツモ。
2シャンテン戻しの打。先の形にを引くとリーチのみのテンパイとなってしまうが、ペンターツを払うことで、567・678の両方に対応できるようになる。さらにタンヤオまでつけば、打点的にも満貫・ハネ満クラスとなり、申し分ない。
最初の1シャンテンとは見違えるような形で1シャンテンに復活。この辺りの構想力はさすがだ。
ここまで仕上げたところに安目引きは不服も不服だが、南2局で負けているだけに、さすがにここはリーチ。ツモなら打点も十分である。
「先にこっちが入れよ・・・」心の声が聞こえてきそうな切り。この局は馬場と白鳥の2人テンパイで流局する。
南3局は、大きく点数が動いた。トップ目寿人の先制リーチに対して親の小林が追っかけリーチをかけ、寿人が放銃。この時点で小林の手はリーチのみだったが・・・
なんと裏3。供託も含めて14000点以上を加点し、小林が4番手から一気にトップまで浮上した。
次局は白鳥が単騎待ちリーチを敢行。ダマテンでもアガれるが2600は3200では全く決定打にならない。大きくアガって最終局を有利に戦おうという、勝負のリーチだ。が早い段階で各者から切られており、ある程度山に残っている自信もあっただろう。
実際、はリーチ時には全て山にあった。だが、結果は追っかけリーチの寿人に放銃。5200は5800の放銃にリーチ棒もつき、寿人と小林が優位な立場で最終局を迎えることとなった。
南4局、逆転を狙う親番の馬場がピンフ三色の1シャンテンまで手を進める。