推しの子は推されて押して強くなる　1637の思いと共に　篠原冴美、いざ最強へ【 #麻雀最強戦2023 】 女たちの殴り合い観戦記【決勝卓】担当 #東川亮

この日、2戦を通じて篠原のリーチ回数は二桁に達していた。
そのなかでもおそらく、最も決意を込めて発されたのではないだろうか。

役あり、トップ目からの「リーチ」。
もちろんリーチをすれば反撃に遭って直撃を取られることもある。そのリスクを負ってでも、今は踏み込むべき局面だと判断したのだ。そうでなければ勝てないと。

親番の残っている菅原がダブをポンしてテンパイ。
篠原のリーチを蹴って加点できれば自身の親番でチャンスが広がる。

小宮が追いついてリーチ。こちらはもう崖っぷちだが、篠原から直撃を取れれば一気に土俵際から中央付近まで押し返すことができる。
殴り合いを制したのは─

篠原。そして裏ドラは、

勇者を祝福する。
リーチツモピンフイーペーコー裏裏の3000-6000。これで篠原の持ち点は5万点を超えた。

小宮、仲田の親番は自身のアガリで潰した。
残るはただ一人。
今最も勢いに乗っている女性プロ、菅原である。

小宮と仲田はトップから大きく離されており、残り2局でハネ満・倍満クラスを連発する必要がある。
そうなると普通の手でアガリに来ることはなく、南3局は実質、篠原と菅原が1対1の構図となる。
つまり、篠原はこの局を自力で流しに行かなければならない。
それでも放銃は避けたいとなったときに、守備力を担保しつつアガリが狙える手として有効な手役の一つが、安全牌候補の字牌を無理なく抱えられるホンイツである。

そしてポンから発進。手牌を短くするリスクはあるが、それよりもこの局のアガリを見る。
仮に満貫を放銃したとして、自分が優位にあることに変わりはない。

そこから首尾良くと引いて最速のテンパイ、待ち。

菅原もポンで追いつく。
カン待ちはタンヤオ三色ドラドラの満貫。

故に、このは止められない。

篠原が、目下のライバル菅原の親番も自力で蹴ることに成功。

1局勝負のオーラスは仲田が四暗刻1シャンテンという手を入れるがテンパイには至らず。

事前予想も何のその。低評価を覆し、ファンに推された出場した最強戦で、篠原が結果という最高の形で一つ恩返しを果たした。

小宮と菅原はアガリがないまま敗退。
小宮に関しては東1局のダブルリーチが空振りして以降は気持ち良く先制できるテンパイが入らなかったのが厳しかった。
菅原も南3局のチャンス手が実っていたらどうなっていたかは分からないが、どちらの局も最終的にアガりきった篠原を褒めるべきだろう。
仲田もラリアットを炸裂させるような手には恵まれなかった。

勝った篠原は、「トップ目に立っても攻め続ける」気持ちで対局に臨んでいたという。
その意識ももしかしたら、自分一人だけの戦いであれば持てていなかったのかもしれない。

他のプロとの比較はできないが、彼女はファンをとても大切にする麻雀プロだと聞いている。
もちろんこれまでも、感謝の気持ちはあったはずだ。
しかし今回は1637票もの後押しを受けて、最強戦の舞台に立たせてもらった。だから彼女にはそこで、自分を応援してくれる人たちに恥じない麻雀を打つ責任があった。
それを見事に果たした、そして結果まで出したことは、称賛されてしかるべきだと思う。

麻雀は個の力で戦うゲームだ。しかし彼女は、一人ではない。

私の夢は、みんなの願い。
みんなの夢は、私の願い。

1637の思いと共に、彼女は今、頂を目指す権利を得た。
篠原プロ、おめでとうございます！