一瞬の間を置き、園田の決断はノーテン。
そして忍田も、そして丸山も手牌を伏せ、試合は終わった。
勝ち上がりは、1位本田、2位園田。
しかしその戦いは、初戦の東1局の段階では誰も想像すらできないような混沌と緊張に満ち満ちていた。
最後に、丸山の最後の選択について触れないのは観戦記として収まりが悪いと思ったので、私見を書かせてほしい。編集部にカットされるかもしれないけど。
丸山の切りやリーチ判断、そして最後にノーテンで伏せた判断について、試合後にネット上でいろいろな意見が飛び交っているのを目にした。中にはMリーガーを含めトップクラスのプロたちの貴重な意見もあるので損得などの話はぜひそちらを参考にしていただければと思うが、最後のテンパイについては「テンパイしているのだから開けてもよかったのではないか」と感じた(くれぐれも「開けたほうがよかった」ではないことはご承知置きいただきたい)。見ている側としてはそちらのほうがモヤモヤが残らないから、という理由なのだが、もちろんこれは選手の意志が尊重されるのが大前提の話ではある。実際、テンパイノーテンの意味など、記録の末尾の数字が少し変わる程度の意味しかない。
一方「if」の話として、もし忍田がテンパイしていたら丸山の選択によって勝者が決まる状況があり得たし、実際にそれを話題に挙げる声もあった。そのときに対象になるのが「契約満了になるチームのチームメート」である以上、意志、思想、哲学、感情、何によって下された決断だとしても、どうしたってネガティブな反応はあったと思う。個人的にはそれを想像して少し気が滅入るところはあった。選手の選択に対してはたとえ自身の考えに合わなかったとしても一定のリスペクトがあってほしいと願っているし、少なくとも自分はそうあるよう心掛けていたい。
昨年の麻雀最強戦で似たような事例があって、そのときは業界を長く見てきた黒木真生プロが状況や考えをまとめたnoteを書かれているので、参考までに紹介させていただく。(有料記事)
近代麻雀黒木note:最強戦オーラス《逆》奈良判定の真相
いずれにせよ、この試合で赤坂ドリブンズの丸山奏子はいったん見納めとなる。ただ、彼女の麻雀プロ人生はこれからも続くし、Mリーガーとして区切りとなったこの試合からもいろいろなことを学んで、きっとさらに強くなっていくはずだ。その姿を、今後も応援していきたい。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。