”善く戦う者に智名勇功無し” 龍を継ぐもの仲林圭は 常に勝つべくして勝つ【Mリーグ2023-24観戦記 10/13】担当記者 #後藤哲冶

堀が追い付いた。狙い通りの【5マン】を引き入れて、【5ソウ】【8ソウ】待ちの高目三色タンヤオテンパイ。
リーチで追いかける。
トップにこだわる堀の、打点を見た素晴らしい手順だ。

この勝負を制したのは――

仲林だった。
名手はいらない。勝ちやすい状況を作り、少しでもチームにプラスを持ち帰る選択をする。
押し切った仲林が、一つ抜け出したトップ目に。

しかしこのまま逃してくれるほど、今日のメンバーは甘くはなかった。

太が松ヶ瀬から5200をアガって迎えた東4局

ここでダメ押しと言わんばかりの仲林の先制リーチ。
これをツモれば点棒は6万点台へ突入し、南場があるとしてもかなり余裕のある状態でゲームメイクをすることができる。

しかしそうはさせないのが堀だった。
雀頭が仲林の現物【1ピン】だが、ここは【7ソウ】を勝負して形をキープ。
放銃すると高確率で着順が落ちるが、そんなことは承知で攻めにかかる。ここで仲林を逃せば、親番があるとはいえトップが厳しくなる。
ならば着順ダウンのリスクを背負ってでも、この手で勝負に行く価値があると踏んだ。

【赤5ソウ】……!
追い付いた。迷わない。堀の低い声が対局室に冷たく響く。
リーチだ。

堀の一発目のツモ牌は……【6ピン】
一発でツモってみせた。

そう簡単にトップなど獲らせてたまるかと言わんばかりの3000、6000。
まだ勝負はわからない。

南1局、堀が魅せれば松ヶ瀬も魅せる。

【赤5ソウ】を引き入れてテンパイ。普通の【2ソウ】【5ソウ】ならドラが出ていくと3900点からと少し寂しいが、【赤5ソウ】なら7700から。
打点十分と見れば、ここでリーチも大いにあるが。

松ヶ瀬はテンパイを外した。変化の牌が多く、まだ7巡目。
この手はまだ育つ。松ヶ瀬のこの選択が。

あまりにも綺麗にハマる。
絶好の【6ソウ】を引き入れてリーチ。そして一発での【5ソウ】ツモ。
これを捉えられる打ち手が、Mリーグにどれだけいるだろうか。
松ヶ瀬も追いすがる。

南1局1本場

字牌を多く持つ進行をしていた仲林が、【西】を仕掛けた太に対して【中】を切る。
これに太がポンの声。

現状ラス目に沈む太が、ホンイツをアガってくれるのは悪くない。
仲林にとっての最悪は、親の松ヶ瀬や、堀の高打点の和了だ。

堀のリーチがかかった後、太がホンイツをツモアガる。
局の結果だけ見れば、堀のリーチに対して押し切った太がアガった。ただそれだけ。

もちろん、自分で重ねても良いという思惑もあっただろう。
しかしもし、この局仲林がもっと早く字牌を切り出していたら。
太の仕掛けに対して、【中】を切っていなかったら。もっと違った結果になっていただろう。これもまた、仲林が描いた勝つための選択。

南2局

最後の親番で、堀が攻める。
【2マン】【5マン】のリーチ。仲林からトップを奪うためのリーチ。

しかし仲林もまた、【5マン】を引き入れて絶好の現物待ち【4ピン】【7ピン】
堀の親を、確実に落とす。
これを盤石のダマに構えて――

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