麻雀界を盛り上げる役目としても勝つ為の戦い方としても至極真っ当な発言だ。
10代の頃はわからなかったあの言葉が40代目前となって少しだけ理解できたなぁ。と感傷に浸っていたところ魚谷の手牌が倒れていた。
ホウテイで萩原5800点の放銃である。
『災難ってモンはたたみかけるのが世の常だ。言い訳したらどなたか助けてくれるのか?死んだらオレはただそこまでの男……』
こんな逆境は数え切れないほど跳ね返してきた男が立ち上がる。
かなり点棒を削られてしまった萩原だが諦めるにはまだ早い。
手牌はそこそこといったところだが、親の魚谷が手出しでと払ってきている。
お構いなしに目一杯に構えた。
親の手が良いことは全員の共通認識ではあるが、この選択がハマる。
待ちへの感触は悪くないリーチだ。
2000-4000のツモアガリ。
やっと片目が開いた。
南2局
萩原といえば四暗刻だ。まだ麻雀の対局がネットで放送し始めた10年前はよく観ていた光景なのだが、今回はが切られてから重なったこともあり威力は半減している。
すぐにポンテンは取れた。しかし、山にドラのは生きておらず厳しいかと思ったのだが
高宮の手牌から唯一ドラが放たれるテンパイが入り大きな大きな12000点のアガリ。
南4局
点数的には2着死守といったところだったが、手牌がこうなれば『ド派手大作戦に変更じゃァー!!!』となるだろう。
手広く打ってカンのテンパイには魅力があまりない為、どの牌を摘んでもこの瞬間の差はないのだが…
この表情も納得の裏目を即ツモである。
おまけにこうなると、こんな表情にもなるだろう。
流石に異常事態を感じ取った魚谷がアガリを拾いに仕掛けを入れる。
ハネツモでトップの萩原が逆転を目指すためにはリーチがほぼ必須のため、安全度を重視して先切り感覚のにロンの声がかかる。
8000は8300点。
直撃はしたものの少しだけトップまでには足りなかった。
とはいえ、着順ダウンも十分にある状況で賢明な判断に見える。
首の皮一枚で逃げ切りに成功した魚谷の表情が少し緩んだ瞬間だ。
『笑ってねぇで後悔しろよ… もう二度と来ねぇぞ。今みてぇな俺を討ち取る好機はよ。』
そんなセリフを胸に次戦に向かう萩原を見ると気持ちが昂ってくる。
萩原の麻雀は面白いんです。それは理論やプレイだけではなく、人としての魅力に溢れているからだ。
『千両道化のハギー』
次の出番が待ち遠しい。
坪川義昭(つぼかわよしあき) 日本プロ麻雀協会5期前期生。雀王戦B1リーグ所属。行政書士法人石田事務所に勤務。 https://www.ishida-tomoyuki.com X(旧Twitter): @eehounotsubokku