対局後、「もしも負けたとしたらこれ」という失着の部分をしみじみと語った石井。
「勝ちたい意欲が強すぎて… 序盤のリードが押しを弱めてしまった。」
と語る石井の声は弱弱しい。
まさに、これこそが石井が観た「最強戦の魔物」の正体なのではないだろうか?
魔物は甘美な香りを伴って現れ、リスクを追わずに勝てそうな道を見せつけてくる。
勝負に立ち向かい、いばらの道を進まなくてはならないのが最強戦であるということ。
わかっているはずなのに、その1牌が押せない…。
G1タイトル保持者の石井ですら、その足元をすくわれかねない「最強戦の魔物」の恐ろしさ。
それは想像を絶する。
本来ならば石井のマンガンツモで終わっていた局だが、日向も決めきれずに2人テンパイ。
ここで石井の表情がカメラに映された。
「まるで負けてる人の表情だね。」
瀬戸熊最強位が石井の心情を代弁したが、さらに魔物は追い打ちをかけてくる。
次局の南1局6本場。
躍動するツモを捕まえて、ノーミスでタンヤオチートイツをテンパイした石井。
しっかりと場を見渡して選んだのは。
ここでナビゲーターの梶本氏が、一瞬手迷いを生じさせた石井の姿に言及した。
「1枚切れのに一瞬手をかけたのに、何か思い直してにしましたよね。」
最強戦の魔物に揺らされた石井。
わずかな迷いに誘われ、からに待ち替えした道の先で悲劇が待っていた。
急所のカンをチーした日向。
単騎選択を誤った格好の石井からカンも鳴けて、高め三色のタンヤオドラ2テンパイ。
ようやく納得のを引き入れてリーチに行く石井だったが万事休す。
このは日向の注文にストライク。
打点は3,900(+6本場1,800)と大きな痛手とはならなかったが、石井の精神状態が極限に近づいたのではと見受けられる。
石井の親番を落として迎えた日向。
勝負の南2局。
ここで、石井を魔物から救う女神が登場する。
「淑女なベルセルク」高宮まりだ。
初打から河にドラを切り、安全牌を抱えつつ場が安くなるようにコントロール。
自らの和了可能性が低いと観るや、
ションパイのをサッと切り出し、石井にトス。
こので我を取り戻した石井。
黒沢からすぐにが出て、日向の親番を落とすことに成功。
残る黒沢の親番を落とせば、ザ・リベンジ決勝への道が拓かれる。
南3局。ドラは。
黒沢の先行リーチはドラ待ちのカン。
石井はこれを勝負所と信じて前に出る。
のメンツを晒して、とのシャンポン待ちで全ツッパ。
通っていないピンズの筋をノータイムでぶった切って真っ向勝負。
最終的にはこれを押し切り、マンガンツモ。
をツモ和了る力強い牌の音を聞いた魔物は、断末魔の声を上げて石井の前から消えた。
たった半荘1回のスプリント戦である麻雀最強戦。
しかし、そのわずかな時間の中で、人は迷い、苦しみ、そして成長する。
単なる一発勝負ではないのだということが、石井良樹の姿を通じてリアルに映し出されたような気がするが、読者の皆様はどのようにお感じになられただろうか?
石井良樹よ、眩いあの舞台まであと一歩だ。
強引グ・マイウェイ!
ただひたすらに、その道を進め!