しかし、単純には自分の目から最後の牌であり、通常は怖さが勝って手はかかりにくい。
待ちへの感触と残り巡目との相談でアガリ切ることの大切さを我々教えてくれたような一打だ。
大物手を狙うだけが勝つ術ではないことを体現してくれている。
ハイテイで掴んだのが当たり牌のだ。
ここは長考してテンパイを崩した。ヒントの少ないリーチが故にまだ危険牌は押してもそうそう当たらないのは確かだが、ホウテイの1ハンとドラ周りのコンビネーションでメーターが降りに傾いた。
これが当たらないやだとしても同様の選択をしただろう。
が当たっていたのは偶然ではあるが、プッシュからの判断はナイスプレーと言わざるを得ない。
南4局
親の第一打にポンの声。
太がゲームを決めに来た。このアグレッシブさが彼のストロングポイントである。
テンパイ一番乗りは当然太だ。
しかし、ハネマンツモでトップを捲れる佐々木からリーチが入る。
手牌もしっかりとツモッパネだ。
ラス目の親番、多井からもリーチが入った。
打点こそないものの待ちは超一流。
太にとって最後の勝負所がやってきた。
は両方のリーチに無筋ではある。
佐々木には、多井にはが早い巡目に切られてはいるが全く通ってはいない。
そして、両方のリーチに対しての現物はある。
トップ目で勝負を先延ばしにする選択は存在するし、そう選択する選手もたくさんいるだろう。
音も立てずに優しくを勝負した太に麻雀の女神は微笑んだ。
【渡辺太】でも【太くないお】でも【ないおトン】でもなかった彼に出会ってからもう10年以上の時が過ぎている。
お互い大学生の頃によくディスプレイ越しに対戦していた青春を思い出した。
おめでとうステルスデブ君。
こうして赤坂ドリブンズは鈴木たろう、渡辺太のデイリーダブルを達成したのでした。
坪川義昭(つぼかわよしあき) 日本プロ麻雀協会5期前期生。雀王戦B1リーグ所属。行政書士法人石田事務所に勤務。 https://www.ishida-tomoyuki.com X(旧Twitter): @eehounotsubokku