日向藍子の猛追、
逢川恵夢の粘りを振り切った
西嶋千春、古谷知美の胆力
【A卓】担当記者:山﨑和也 2020年9月6日(日)
麻雀最強戦2020もいよいよ折り返し地点を過ぎた。ここまでのファイナル進出者を見てみると、ベテランから若手まで幅広い顔触れとなっている。ますます盛り上がりを見せていくことだろう。
今回は『タイトルホルダー対Mリーガー最強女流プロ決戦』A卓の模様を紹介する。まずは選手を見ていこう。
女流桜花 古谷知美(日本プロ麻雀連盟)
2019年、女流桜花戦で仲田加南の4連覇を阻止し、悲願の初タイトルを獲得したニューヒロイン。筆者は初めて対局を目にする。攻撃寄りにしているとのことだ。
女流最高位 西嶋千春(最高位戦日本プロ麻雀協会)
女流最高位3連覇という偉業を引っさげての出陣。ミスの少ない、ソツのない打ち回しが持ち味の実力者だ。あまり麻雀界に詳しくない筆者でも知っている有名女流雀士である。
女流雀王 逢川恵夢(日本プロ麻雀協会)
今年、女流雀王2連覇を果たした。最近では自身のTwitterで「しぬこ」さんとの麻雀ツイートが話題を呼んでいる。「しぬこ」さんは近代麻雀誌で連載を始められたので、併せてご覧いただけたらと思う。
プロクイーン 日向藍子(最高位戦日本プロ麻雀協会)
Mリーグでもおなじみの日向がA卓に登場。各団体の垣根を超えた「プロクイーン決定戦」で2連覇した実績を持つ。Mリーグが始まる前に幸先よく突破したいところ。
それでは対局に移ろう。この対局は非常に長かったので、全体的にざっくりと紹介していく。(それでもかなりの量なので、お時間のある時にご覧ください)
まずリードを奪ったのは親の西嶋。東1局、東1局1本場と連続で2000オールのアガりを決める。ただのラッキーパンチではなく、じっくりと待ちを厳選してのアガりだった。
2着までが勝ち上がり条件で、12000点超えのリードは大きい。まずは一人確定かと思いきや、そう簡単には終わらなかった。
東1局2本場。
ここでも西嶋の勢いは止まらず。イマイチな配牌から有効牌を引き続けて先制リーチを放った。ダマでもアガれるが、緩まずに畳み掛ける。待ちは。
親リーチに放銃すると一気に苦しくなるので、しぶしぶ引き下がるのが普通だろう。古谷は2枚目のドラを手にしたがそれでも回った。
しかし日向に絶好のペンが入ってしまった。左隅を見ていただきたいのだが、日向は一度逢川の出したをスルーしているのである。「あそこで鳴かなかったのはこれを待ってたのよ」という心境だっただろう。浮いているを力強く切った。
7700は8300の加点で西嶋がさらにリード。持ち点は45000点を超えた。「ほぼ当選確実といっていいかもしれませんね」とは解説の片山まさゆきプロ。しかし終局後、この発言を後に悔やむことになるとは。
東1局3本場。
さすがの西嶋もここはお休み気味の手。チャンタ含みでいけるかどうかだが、無理に攻める状況でもなくなっている。
先ほど痛恨の放銃となった日向が最初にテンパイ。カン待ちでダマにとった。を引いての三色、を引いての平和確定でリーチをしたい。
しかし西嶋が驚異的な引きを見せて徐々に臨戦態勢になってきてしまった。
そしてテンパイ。とのシャンポン待ちで追いついた。どちらも日向が掴んだ場合、すぐに切ってしまう牌である。こんなにうまくいくとは。
「うわあああ事件爆弾セットされた!危なすぎる!」と実況の日吉辰哉プロ。西嶋はリーチをかけず、ひっそりと山に爆弾を忍ばせておく。
しかし日向が踏みとどまった。500―1000は800―1300と安いものの、価値のあるアガり。この一局を境に、西嶋の支配していた世界線が変わっていく。
東2局。
親の古谷はダブを暗刻にして、アガりやすい手格好となっている。ここは打として筒子を払った。
逢川は索子がどんどん押し寄せてきている。ここまで我慢を続けていた古谷と逢川、両方にチャンス手が入った。
古谷がを引いて待ちのテンパイ。引きが何とも強い。ダブドラ1で、出アガりでも満貫級だ。索子が場に高いこともあり、ここはダマが賢明だろう。
古谷に負けじと逢川のツモも凄まじい。イーシャンテンで追いすがる。