『気持ち』が生命線〜瀬戸熊直樹の思いが呼び寄せた快勝劇【Mリーグ2023-24観戦記 3/5】担当記者 千嶋辰治

ドラ表示牌に現れたのは【7ピン】
配牌イーシャンテンの瀬戸熊にとって、喉から手が出るほど欲しい【7ピン】王牌に2枚見えた。
そして、その部分が埋まることなくテンパイ。

しかし、瀬戸熊は躊躇することなく、その【7ピン】に照準を合わせて即リーチに出た。

瀬戸熊の河を見ると、1打目に【2ピン】、3巡目に【3ピン】がツモ切られていて、リーチ宣言牌が【4ピン】
なぜ【4ピン】をここまで引っ張ったか? ということに着目すると、【4ピン】【6ピン】【8ピン】の形から【4ピン】を離したカン【7ピン】という形は読み筋に入る。
だが、ドラ表示牌に2枚見えているカン【7ピン】でリーチを放ってくるだろうか?

という他家の思考に結論が出るよりも早く、追手がやってきた。

多井だ!

タンヤオ含みのピンフテンパイ。
ここは真っ向勝負の追っかけリーチ。
自ら退路を断ち、盟友とのめくり合いに持ち込んだ。

多井は一発目にツモってきた【5マン】を河に叩きつけてこの表情。

瀬戸熊の手牌に投げかける眼光の鋭さ。
殺気に満ち満ちている。

形としては圧倒的に多井の方が有利…に見えるのだが、瀬戸熊が【9マン】を4枚使いしていることもあって、山に【6マン】が残り1枚。
対して、瀬戸熊の【7ピン】は2枚生きていて、残り枚数は瀬戸熊が有利。

そして、

多井の和了牌は亜樹に流れて。

さらに【7ピン】をつかまされて万事休す。

瀬戸熊が手を倒し、裏ドラをめくると、

正規のドラの下に眠っていたのはまたも【7ピン】
乾坤一擲のリーチが実った瀬戸熊。
12,000点を加点して持ち点を大きく伸ばす。

しかし、瀬戸熊の独走状態とはならなかった。
南2局に亜樹が小林からハネマンを和了り、瀬戸熊に肉薄。

当面のライバルである風林火山に競り合いへと持ち込まれ、雷電サイドから見ると追い付かれた格好。
嫌な雰囲気が漂い出した南3局に、このゲームの決定打が飛び出す。

瀬戸熊の配牌。
ドラの【3ソウ】が2枚配られ、早い&高いが両立した手をもらった。

さらに瀬戸熊は【6ピン】【5ソウ】と引き入れて6巡目にテンパイ。

直前に多井が【2ソウ】をトイツ落とししていて、ドラ表示牌と合わせて【2ソウ】が3枚見えている。

ならば…。
ドラがヘッドの亜リャンメン
形は無骨で不恰好だが、瀬戸熊は即リーチに出た。

「終盤戦は、どのチームも必死なので、気持ちだけは絶対負けないつもりでやります。」

対局後の私の取材に対して、こう答えた瀬戸熊。
さらに、

「僕自身、もともと技術は大したことないので、『気持ち』が生命線。諦めることと、集中を切らすことだけは絶対にしてはならないと思っています。」

と語った。

『気持ち』。

気の持ちようで、積まれている牌が変わるわけでもあるまいし… という考え方はごもっとも。

しかし。

瀬戸熊のリーチの直後、「麻雀星人」の異名をとる多井が長考に沈み、

 

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