選ばれたのは「修羅のオーラス」 ”もしも”の果てに積み上げられた四者の結末【Mリーグ2023-24観戦記 3/12 多井隆晴 VS 勝又健志 VS 鈴木優 VS 本田朋広】担当記者 渡邉浩史郎

ソウズは悪くないとにらんでいただけに、本田の表情も歪む。

そしてこの【赤5ソウ】ツモ切りでもう一人の選択が待っていた。

多井である。鳴けば手の内で赤赤ドラを使ってのマンガンが見込める。

しかし多井はさほど時間を掛けずにツモ山に手を伸ばした。

そして両面を壊す【6ソウ】切り。ホンイツ・七対子方向に舵を切る。

【赤5ソウ】を鳴いて【東】の対子落とし、【發】バックかタンヤオ変化でマンガンツモトップ・出和了り場所で二着逆転を作りに行くのがセオリーなのは間違いないだろう。

麻雀星人の視界には何が見えていたのだろうか。明確に濃い本田・優の河が関係しているのは間違いないだろうが……

本田が聴牌・多井がホンイツに舵を切った裏でイーシャンテンなのは二着目の勝又。門前ならダマテンで3900の出和了り条件を満たせるため、5枚目の【2ピン】【5ピン】をぐっとこらえて見送る。

【發】ポン、【東】アンカンの多井がさらに【發】を引いてきて小考。
ツモ時の打点は足りているため、ここでの加カンは自分のツモ番を増やす+新ドラを載せて跳満どこからでも出和了りOKにする二つのメリットがある。
一方でデメリットは門前三人の打点を増やすことだが、例えば優から勝又への8000放銃や本田から優への12000放銃など、棚からぼたもち的に三着が転がり込んでくる未来もある。

ラス目だからこその加カンで攻め込むが……

嶺上から掘り起こしたのは、山に最後の【2ピン】【5ピン】

これにはさすがの勝又もチーして高めツモ直の聴牌を取る! ほぼ和了り無しの局面から一転、山に二枚の【3マン】をめぐる攻防。

焦れ続けた半荘。焦れ続けた南4局、軍師が動いてからの決着は一瞬であった。

高めツモでの800点捲り、この半荘、誰一人30000点を超えることなくゲームが終了した。

もしも本田がカン【7マン】を取らなかったら、リーチしていたら、もしも多井が【赤5ソウ】を鳴いたら、加カンをしなかったら、もしも勝又が【2ピン】【5ピン】を一巡早く鳴いていたら……
各チームのファンからすればまさに「もしものドラマ」が詰めに詰め込まれたオーラスとなった。

最終戦に近づけば近づくほど残酷にポイントは進出と敗退を指し示す。結末が近づけば近づくほど、「もしもあの時……」の想像に苛まれていく。

ここに表示されているのは、ファンの「もしも」「たら」「れば」の思いを載せた、無情に結果のみを表す数字の羅列。
熱狂の中で共に心を苛まれながら、その行く末を見届けよう。

  • この記事が気に入ったら
    フォローをお願いいたします!
    最新の麻雀・Mリーグ情報をお届けします!

  • \近代麻雀戦術シリーズ 新刊情報/