大逆転か、はたまたダブル役満か 混沌の一戦を制した勝又健志のリアル【Mリーグ2023-24観戦記 3/29】担当記者 #東川亮

だが、試合は続く。

そうして訪れた、奇妙で混沌とした1局の主役は、勝又や大介ではなかった。

麻雀は、4人で行うゲームなのだ。

 

―最終日に生まれかけたダブル役満の夢―

南2局のことだった。ここまで苦戦が続いていた堀に、役満・国士無双がちらつく手が入る。4巡目に10種目の【9ピン】を引くと【9マン】切り。ソーズを温存することで、少しでもホンイツへとミスリードさせようとする。

だが、この手が思わぬ方向に伸びた。【西】【東】と引き入れ、【東】【南】【西】【北】が全てトイツに。こうなると、国士無双よりも役満・小四喜のほうが視野に入ってくる。小四喜であれば仕掛けも可能。

場に出ている牌を見定めて、堀が選んだのは

2枚切れている【1ソウ】国士無双はここで見切る。

さらに【白】引き。一応、混一色混老頭チートイツの1シャンテンではある。だが、ここまできたら見えるのはさらに先。いまだMリーグで出現例のない役満の複合「ダブル役満」である。この時点で、【東】【南】【西】【北】【白】は全て山に生きていた。

一方、【8マン】を暗槓していた大介が、自らで暗刻にしている【2ピン】で手を止めた。このとき、大介は大明槓でドラを増やして堀や浅見の打点をつり上げ、勝又をトップから引きずり降ろすことを画策していたという。

先制リーチは大介。ドラ赤を4枚使った高打点になっている。ただ、このリーチは直撃でなければ三倍満にでもならない限り、アガる気はなかったそうだ。勝又のリードが保たれたまま1局消化するのは、自分たちの条件を厳しくすることにつながってしまう。

直後、勝又がテンパイ、フリテンながら3メンチャン。またも勝又が希望の芽を摘むのか。

次巡、堀が【南】を引き、ダブル役満へ一歩前進。しかも、リーチの大介はもはや牌を入れ替えることができない。控え室も、視聴者も、にわかに沸き立つ。

浅見が大介の現物【白】をツモ切り、当然のポン。ダブル役満、1シャンテン。まだ可能性は十分に残っている。親のダブル役満の打点は実に96000、これに大介が打ち込んでしまう未来すらあり得た。

さらに浅見がテンパイ。出ていくドラの【4ピン】は、【1ピン】を全員が切っていて【6ピン】が自身から4枚見え、リャンメンには当たらない牌だが、シャンポンや単騎、カンチャンに当たる可能性はある。

下が離れた2着目ということで守備に回る選択もあり得たが、

浅見は強気にリーチを選択。だが、これで浅見も字牌が止まらなくなった。

テンパイは3人。しかし最も視聴者の注目を集めたのは、間違いなく堀である。ダブル役満の奇跡は成るのか。その手に訪れたのは・・・

【2ソウ】、浅見のロン牌。

東をポンして、Mリーグ史上初となるダブル役満テンパイ。しかしその夢は

はかなく潰えた。

この局に関してはぜひ、ABEMAプレミアムでご覧いただきたい。

大介が逆転への執念を燃やし、堀が前代未聞の見せ場を作り、それを浅見が阻止した。各者の願いが渦巻く一戦が終わり、残ったのは、

最後までシビアに立ち回り相手をねじ伏せた、勝又健志の勝利という結果。

そして、BEAST Japanextとのボーダー争いは事実上決着した。

 

麻雀は、Mリーグは、決して美しいストーリーとはならない。

予測がつかず、立場によってさまざまなコントラストが生まれる。

4人それぞれにテーマとドラマがあり、それらのぶつかり合いが思いもよらない混沌を生んだ、なんとも奇妙な一戦。

みなさんは、この試合をどのように受け止めたのだろうか。

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