見えない攻防──決め手は美しい構想力──【Mリーグ2023-24セミファイナル観戦記 4/19】担当記者 小林正和

残り半周となった南１局

小林にとって１局１局消化していければ２着以上は手堅い所である。

その状況の中、10巡目に焦点を当ててみると“見えない”らしさが見え隠れしていた。

自己都合だけで考えればドラのだが、親の高宮がを仕掛けているので流石にキツイ。

また、イーシャンテンではあるが愚形残りなのでアガリも厳しそう。

そうなると現物のでその瞬間の放銃を避けるルートも出て来るが、小林はを河に放った。

次の手出しが入った時に切る牌が無くなるのを避けながら、万が一ドラが通った時の為にアガリの道筋を残しているのである。

そしてではなくというのも細かい所ではあるが、相手の手牌構成を考慮しての１打なので見て頂きたい。

どちらもション牌ながら、松本と太のが早目に切られており二人は持っていなさそう。つまり、残りのは山に眠っているか高宮の“見えない”手牌の中。

実際には高宮にがトイツで組み込まれている。絶好のポンテンとなるキー牌であった。

結果的には松本のリーチを誘発させるも、高宮が持ち前の戦うスタイルで押し切り

・ドラ２の2,000オール（＋1,000）となるが

仮にポンテンが入ると、加カンの材料であるが直ぐに高宮の元へ。そして直ぐにのツモアガリの2,600オール以上となっていた… かもしれない。

麻雀はタラレバの連続。
“見えない”未来の行方は過ぎ去りし現象となり今となっては確かめようがない。

それでも人は予知し期待する動物。

南４局
ノーテン罰符のやり取りでも順位が変動する接戦となったオーラス。

微差ながらトップ目に立つ小林が僅か６巡目ながらピンフテンパイである。

対照的に

七対子ならリャンシャンテンではあるが小林とは2,900点差と出アガリトップを狙うならリーチが必要。

まるでチーム事情をそのまま映し出しているかのような構図である。

レギュラーシーズンで敗れ去ったチームが試合を盛り上げ

チームメイト、そしてサポーターが見守る。

それでも、やはり“見えない”風はパイレーツに吹い…

高宮
「ポンっ！」

パイレーツへ風は吹かせないよ！

ピンフでもない。
七対子でもない。

この手牌は唯一無二の。

ドリブンズから二の矢が放たれようとも

一度掴みかけた“見えない”流れは離さない。

必然と吹き出し口に吸い込まれる

なぜなら…

この手牌は

唯一無二のトイトイの手なんだから…。

高宮まり
逆転のトイトイでこの試合に終止符を打ったのであった。

正直
今まで見てきたトイトイの中でもで何か“見えない”ものに乗っているかのような一番美しいアガリであった。

これからセミファイナルも後半戦へと続いていくが
まだまだ“見えない”展開が起こりそう、そんな未来図が浮かんでくる試合。