渡辺太
シンギュラリティの風は
ドリブンズの逆境を
打ち砕くか
文・後藤哲冶【木曜担当ライター】2024年5月9日
Mリーグファイナルは既に全日程の3分の1程を消化。

未だファイナルでのトップがないドリブンズは、第1試合エースの園田が登板。
現在ポイント差をつけられた4位ということもあり、なんとしてもトップが欲しい状況だった。
そして全18局のロングゲームの末、園田も道中素晴らしい食らいつきを見せたものの、3着でゲームを終える。

優勝までの距離は、400ptほど。
これはもう、いよいよトップを取らないと早々に優勝の可能性が潰えてしまってもおかしくない差だ。

そんな状況下で任されたのが、今年ドリブンズに吹き込んだ新しい風、渡辺太。
幾千にも渡るネット麻雀での経験と、今年1年培ってきた大舞台でも変わらぬ精神力で、ドリブンズに推進力を与えることができるか。
5月9日 第2試合

東家 堀慎吾 (KADOKAWAサクラナイツ)
南家 勝又健志(EX風林火山)
西家 渡辺太 (赤坂ドリブンズ)
北家 瑞原明奈(U-NEXT Pirates)
この第2試合、まずリードを取ったのは太だった。

東1局、タンヤオピンフのリーチを打つ。
後半、親の堀から追いかけリーチを受けるも、終盤にツモアガリ。大きな裏ドラ1枚を乗せて2000、4000の好スタートを切ると。

(を暗槓)
東3局、迎えた親番で真っすぐに手を組み、カンと愚形残りではあるが迷わずリーチ敢行。
そしてこれも最終盤に残り1枚を見事にツモり、4000オールの加点。
まだ序盤ではあるものの、これで大きくトップへ前進。
これはこの試合は、太のトップかと、ついにドリブンズにファイナル初トップをもたらすか、と多くの視聴者が思ったはずだ。
しかし、ここから太にとってあまりにも長い、終局までの道のりが始まる。
東3局1本場

先制リーチは瑞原から。カン、カン
と引いて文句のない
リャンメンリーチ。

リーチを受けて一発目、太はこの牌姿から、スジのや字牌ではなく、暗刻の
を選んだ。
瑞原のリーチはの対子落としリーチ。
が通っていて
の形では当たらず、
だとすると
のトイツ落としがおかしい。
と持っているところから
2枚を切っての
待ちという形があり得ないからだ。
ならば、シャンポンで当たる可能性のあるや字牌よりも、暗刻で持っている
の方が安全度が高いと判断。
冷静に、一番安全度の高い牌を選びぬく。細かい選択だが、得てしてこういったところに基礎雀力とは出るもの。

瑞原がなかなかツモれないまま終盤、ラス目に沈んでいた勝又が丁寧に回り切ってテンパイを入れた。
ピンフ赤赤の待ち。淀みなく、勝又がリーチ宣言。めくり合いになると――ー

なんと残り1枚だったを、一発でツモ。
リーチ一発ツモピンフ、赤赤で3000、6000。
沈んでいた勝又が一撃で戦線に復帰する。一方でトップ目に立っていた太は6000点の親被りとなってしまった。

セミファイナル絶好調だった風林火山も、ファイナルに来てその調子を落としている。
今日の第1試合でも松ヶ瀬がハコ下2万点近い4着。絶対的エース勝又で、4着になるわけにはいかない。
執念のアガリで、原点付近にまで勝又が帰って来た。
東4局1本場

もう一押しが欲しい太が、ピンフドラ1のテンパイ。待ちで当然のリーチ。

そこに追い付いたのが、を暗槓している勝又だった。
待ちで当然のように追いかける。
残り枚数は2対2。互角のめくり合い。太はこれに敗れると、一気にトップ陥落になってしまっておかしくない。