それぞれの負けられない理由がぶつかる卓上で 岡田紗佳が魅せた集大成とは【Mリーグ2023-24ファイナル観戦記 5/14】担当記者 ZERO / 沖中祐也

それぞれの負けられない
理由がぶつかる卓上で
岡田紗佳が魅せた集大成とは

文・ZERO / 沖中祐也【火曜担当ライター】2024年5月14日

負けられない理由がある。
という表現は、あまりに使い古されていて陳腐に感じるだろうか。

あの勝又がツモに力を込め、亜樹の裏ドラをめくる手が震える。
園田の打牌が荒ぶり、たろうが手牌をクラッシュ。

ベテランといっても差し支えないプレイヤーたちの、揺れる気持ちが卓上に溢れ出す。
ああ、これがファイナルなのだ。

第1試合

東家:勝又健志
EX風林火山
2位 +98.5pt

南家:仲林圭
U-NEXTパイレーツ
1位 +395.2pt

西家:岡田紗佳
KADOKAWAサクラナイツ
3位 +73.4pt

北家:鈴木たろう
赤坂ドリブンズ
4位 +25.9pt

実況:松嶋桃
解説:河野直也

ラス前を迎えるまでは、完全に仲林のペースだった。

東1局に500/1000、東3局に2600をアガった仲林は、東4局

カン【4ソウ】待ちのテンパイから仕掛けている2人に危険な【5マン】を引くと【3ソウ】を打って回った。
これは【5マン】だけではなくその周りの牌をキャッチできることと、【3ソウ】【8ソウ】と比較的安全に落としていけることが大きいだろう。

さらに南2局の親番では

このピンフテンパイをダマテンに構える。
勝又(上家)がドラを切ってきて臨戦態勢、自身の待ちである【4マン】【7マン】がその勝又の現物であることも大きいか。

首位を走るPiratesの現状のプランとしては

大過なく一戦一戦を消化していくことだ。
そうすれば自然と優勝は近づいてくる。

爆発力を求めるなら戦闘民族の優やゴリラ瑞原が適しているが、安定感を求めるなら仲林が随一である。

負けられない理由… という表現は陳腐かもしれない。
誰だって負けたくはないし、16人いたら16つの負けられない理由がそれぞれにあるからだ。

仲林の負けられない理由は──

今週の金曜日であるファイナルの最終日には、PV(パブリックビューイング)が開催される。
仲林はPVのチケットを両親に送った。

両親の年齢は80を超え、とくに父親の方は数年前に脳卒中で倒れ、そういう場所に赴けるのは今年が最後になる可能性が高いらしい。

この話は、何年ぶりかにそんな両親とご飯を食べに行ったときのこと。

「高校はどうだ?」
記憶が曖昧になっている父親が仲林に聞く。
仲林が、もう社会人でMリーガーになったことを伝えると、厳格で、麻雀けしからん星人の父親はバカモノ!と一喝。

慌ててMリーグというプロリーグがあること、そしてUSENの子会社であるチームに所属していることを伝えると、父親は納得した。

ふと父親が言う。
「俺… 同じことを何回も聞いているだろう?」
と。記憶が飛んでいることには自覚があったのだ。

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