「うん、まぁね」
仲林が言葉を濁すと父親は
「多分俺、またその麻雀の話をされたら、同じように怒ってしまうだろうから、そのときは今みたいにイチから説明してもらえるか」
と言うではないか。
あれだけ怖かった父親が、今は小さく見える。
そしてその父親の息子を想う気持ちが痛いほど伝わってくる。
いろんな感情がごちゃまぜなり、仲林はその場で号泣した。
もし仲林が、華やかな舞台で、多くの人に応援され、力強くシャーレを掲げる姿を見たら、父親にとって強い記憶となって残るかもしれない。
残らなかったとしても、絶対にその姿を見せたい。
今年が、最初で最後のチャンスなのだ。
これが仲林の負けられない理由である。
私も車の中でこの話(切り抜き動画)を聞いて、運転に支障が出るほど泣いてしまった。
恋人の愛はク◯喰らえの私だが、親子の愛には弱い。
タイタニックよりもアルマゲドン派なのだ。
誰も必要としない情報を挟んだところで、南3局。
トップ目で迎えた仲林は
・とポンしたこの8枚からを切り、目いっぱいに構えた。
「かわし手・目一杯」とはよく言ったもので、ここで1枚安全牌を抱えたところで安全が保証されるわけではない。
まだ序盤だからこそ、速度に全振りするのだ。
ただ、何度も言うように負けられないのは仲林だけではない。
仲林の仕掛けにドラのを切り飛ばしてきたのが
親の岡田だ。絶好のを引いて、臨戦態勢になったのだ。
切ったに仲林から「ロン、8000」と言われたら、そこで終戦と言っても差し支えない状況である。
それをふまえても、ここは押すよりない。
すぐにテンパイしリーチを宣言。
たろうから出て裏も乗り、12000のアガリとなった。
岡田にとってこれまで連れていってもらった感のあったポストシーズンだが、今期は登板数もトップ数も爆増し、「岡田様」と称えられるほどの活躍を果たした。
地道な勉強がようやく花開いたシーズンと言えよう。
だからこそ、サクラナイツを終わらせられない。
仲林に並びかけた次局。
バックのポンテンをとると…
高目跳満のテンパイを入れていた仲林から
価値ある1500のアガリ。
岡田はさらに3900を加点して、トップ目でオーラスを迎える。
繰り返し語るが、負けられないのはみんな同じ。
(太がこんなふうに祈るとは意外だった)
ここまで繋いできた希望を、途切れさせるわけにはいかないのはドリブンズも同じだ。
オーラス、親のたろうが
リーチ・ツモ・ドラ2の4000オールをツモり、場は混沌としてくる。
1本場、トップ目の岡田が困りに困り果てる。
3者の攻撃に挟まれ、安全牌が全く無いのだ。
まず打牌候補として浮かぶのはたろうの現物である。
これが勝又にロンされて5200以上ならトップが手から転げ落ちてしまう。
ワンチャンスの… は生牌で全員に危険。
たろうと仲林に中筋となるも… 生牌。
を暗槓して安全牌をリンシャンに求めるという奇策もあるが、周りの打点を上げても良いことはない。