それぞれの負けられない理由がぶつかる卓上で 岡田紗佳が魅せた集大成とは【Mリーグ2023-24ファイナル観戦記 5/14】担当記者 ZERO / 沖中祐也

「うん、まぁね」
仲林が言葉を濁すと父親は
「多分俺、またその麻雀の話をされたら、同じように怒ってしまうだろうから、そのときは今みたいにイチから説明してもらえるか」
と言うではないか。

あれだけ怖かった父親が、今は小さく見える。
そしてその父親の息子を想う気持ちが痛いほど伝わってくる。

いろんな感情がごちゃまぜなり、仲林はその場で号泣した。

もし仲林が、華やかな舞台で、多くの人に応援され、力強くシャーレを掲げる姿を見たら、父親にとって強い記憶となって残るかもしれない。

残らなかったとしても、絶対にその姿を見せたい。
今年が、最初で最後のチャンスなのだ。

これが仲林の負けられない理由である。

私も車の中でこの話(切り抜き動画)を聞いて、運転に支障が出るほど泣いてしまった。

恋人の愛はク◯喰らえの私だが、親子の愛には弱い。
タイタニックよりもアルマゲドン派なのだ。

誰も必要としない情報を挟んだところで、南3局
トップ目で迎えた仲林は

【發】【3ピン】とポンしたこの8枚から【東】を切り、目いっぱいに構えた。
「かわし手・目一杯」とはよく言ったもので、ここで1枚安全牌を抱えたところで安全が保証されるわけではない。
まだ序盤だからこそ、速度に全振りするのだ。

ただ、何度も言うように負けられないのは仲林だけではない。
仲林の仕掛けにドラの【8ピン】を切り飛ばしてきたのが

親の岡田だ。絶好の【赤5ソウ】を引いて、臨戦態勢になったのだ。
切った【8ピン】に仲林から「ロン、8000」と言われたら、そこで終戦と言っても差し支えない状況である。

それをふまえても、ここは押すよりない。
すぐにテンパイしリーチを宣言。

たろうから出て裏も乗り、12000のアガリとなった。

岡田にとってこれまで連れていってもらった感のあったポストシーズンだが、今期は登板数もトップ数も爆増し、「岡田様」と称えられるほどの活躍を果たした。
地道な勉強がようやく花開いたシーズンと言えよう。

だからこそ、サクラナイツを終わらせられない。

仲林に並びかけた次局。

【發】バックのポンテンをとると…

高目跳満のテンパイを入れていた仲林から

価値ある1500のアガリ。
岡田はさらに3900を加点して、トップ目でオーラスを迎える。

繰り返し語るが、負けられないのはみんな同じ。

(太がこんなふうに祈るとは意外だった)

ここまで繋いできた希望を、途切れさせるわけにはいかないのはドリブンズも同じだ。

オーラス、親のたろうが

 

リーチ・ツモ・ドラ2の4000オールをツモり、場は混沌としてくる。

1本場、トップ目の岡田が困りに困り果てる。

 

3者の攻撃に挟まれ、安全牌が全く無いのだ。
まず打牌候補として浮かぶのはたろうの現物である【7ソウ】
これが勝又にロンされて5200以上ならトップが手から転げ落ちてしまう。

ワンチャンスの【8ソウ】… は生牌で全員に危険。
たろうと仲林に中筋となる【6マン】も… 生牌
【6ピン】を暗槓して安全牌をリンシャンに求めるという奇策もあるが、周りの打点を上げても良いことはない。

  • この記事が気に入ったら
    フォローをお願いいたします!
    最新の麻雀・Mリーグ情報をお届けします!

  • \近代麻雀 新刊情報/