基本が出ることはない形だったゴモリーだが、このタイミングで唯一切ってもおかしくない引き……!
アキレスの控室は阿鼻叫喚。
「打て打て! 」
監督多井が必死に祈る。
一方ゼウスの控室はお祭り。
「出ろ出ろ出ろ~!」
奇跡の役満が成るか。
結果は――
ゴモリーが、放銃を回避するを打って。
タンヤオでアガリ切った、歌衣がトップを獲得するのだった。
計6回もの12000のアガリが飛び出した第1試合。
その被害に遭ってしまったのが、グラディウスの勝だった。
展開そのものが厳しかったため、次に切り替えて欲しいところ。
トップには、流石の打ち回しでアガリを量産した歌衣。
オーラスも、桜には最悪打っても良いと、状況を判断した押しをしていた。
……実は打ってはいけない打点が出てくるのだが。
が、実況の天開にインタビューを忘れられるというプチハプニングもあり、最後に特大役満が入っていたことも知り、どこか大人しい歌衣だった。
惜しくも3位となったが、最後にとびきりの見せ場を用意してくれた、桜。
惜しむらくは、桜が九連宝燈という役満を知らなかったことか。
もし知っていて、あの手をリーチしなかったら。
そんなたらればを、少し見たいと思ってしまう。
とはいえ、役満成就はならずも、この半荘全体を通して要所要所に素晴らしい選択があった。
誇って良い内容だっただろう。
実は桜凛月という選手は、昨年一番最後の試合に悔いが残った選手の一人だった。
昨年のゼウスにとって最後の試合となったセミファイナル、そこで、ライバルチームであるグラディウスにトップラスを決められてしまった事。
対局の内容は決して悪い物ではなかったが、彼女はずっとそのことを悔いていた。
今日は、控室に帰って来た後、
「悔しかった~!」
とは言葉にしつつも、桜の声音は弾んでいて、心から麻雀を楽しんでいるように見える。
どうか今年は、最後まで笑顔で。
あの日のリベンジは、まだ始まったばかりだ。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924