勝つというのはこういうことだ
近藤誠一の花道は、最強位へと続く道
【決勝卓】担当記者:東川亮 2024年7月14日(日)
「花道」とは、活躍してきた人物の去り際、そこに伴う大きな仕事を指す言葉である。であるならば、麻雀最強戦2024「男の花道」は、まさにこの2人のための大会と言っても過言ではないだろう。
近藤誠一。
今期を最後にしようと思っています。
有終の美を飾るべく、すべてを出し尽くしたいと思っています。
是非ご覧ください! https://t.co/7hFMcyVB27— 近藤誠一🦅🔥 (@sei1k) March 5, 2024
2022-23シーズンをもってMリーグを選手としては勇退、そして今年3月には、自身が戦う最高位戦A1リーグも今期をもって退く意向を表明した。
井出洋介。
前から決めていていつ発表するかだけの問題だったのですが、今日の負けがいいきっかけだと思い、発表します
私は来年の2/15をもって、麻将連合の功労選手を辞めます。
麻将をやめるわけではありませんが、いわゆる古稀を迎える日に、麻将連合のプロ選手としての立場を勇退します。宜しくお願いします。— 井出洋介 (@ideyosuke) February 24, 2024
今年2月、今日の麻雀界の礎を築いてきた偉人は、長きにわたるプロ活動を残り1年で締めくくることを発表した。
2人にとって、麻雀最強戦はまさしく「花道」。しかしそれは、最強位に至る道でもある。そして、道の先へさらなる一歩を踏み出せるのは、1人だけだ。
東2局1本場、近藤の「大きく打つ」麻雀の真骨頂が出る。マンズに狙いを定めてソーズを払い、裏目を引くもののタンヤオイーペーコードラドラ、ダマテンの満貫テンパイが入る。待ちもの3メンチャン、ドラをツモればダマテンでもハネ満。巡目も深くなり、アガリ率を考えてダマテンとする打ち手も多そうだが、
「リーチ」
宣言し、近藤はを横向きに置いた。ここで8000をアガったところで、トップにしか価値のない戦いにおいてはまだまだリードは心許ない。高打点を引いて、勝ちに行く。なんとも近藤らしい一打。
うなりを上げる左腕が、
を引き寄せる。裏ドラは乗らず、3000-6000は3100-6100。その後のツモ山を見れば、ダマテンでも結果は一緒だったかもしれない。しかしこれが、幾度となくファンの期待に最高の形で応え続けてきた、近藤誠一の姿なのだ。
ただ、ファンの期待に応え続けてきたのは近藤だけではない。だからこそ、彼らはレジェンドと呼ばれるのだ。
東4局、親番の井出がホンイツの2600オールをツモアガリ。前巡にを引いてカン待ちかカン待ちの選択があったが、すぐに正解を引き当てる。もちろん井出とて、簡単に終わるわけにはいかない。
続いて東4局1本場、森山がタンヤオドラドラ、カン待ちのダマテンを入れていたところに雀頭のドラが暗刻となり、を切って単騎に待ちを変える。出ればアガるだろうが、もちろんこれはまだ過程。
を引いて、を切れば待ちの変則3メンチャンテンパイとなった。ただ、を自身で切っていてフリテンではある。
森山はどうするのか。長く森山を追いかけてきたオールドファンなら、おそらく次の展開が分かったはずだ。そう、
アトミックフリテンリーチ!
左手で河を押さえる技の性質上、手牌も捨て牌も見えないが、ここはご容赦いただきたい。ツモればハネ満スタート、こういう豪快な麻雀こそ、ファンが森山に求める姿ではないだろうか。
もちろん、必ず勝てるわけではない。待ち牌は山に残っていたが、ここは流局となる。
藤崎の選択も興味深かった。南2局の親番、絶好の引きでタンヤオピンフ高目イーペーコーのテンパイ。ほとんどの打ち手がリーチをかけそうだが、藤崎はダマテンとした。