最後の一打に込めた想い【Mリーグ2024-25観戦記 9/27】担当記者 小林正和 岡田紗佳 vs 二階堂瑠美 vs 仲林圭 vs 多井隆晴

蝉の声から鈴虫の声に変わるように、季節や時代の変遷に合わせて姿を変えていく。そんな側面が見え隠れした局であった。

そして、新たな一面を見せたのは多井だけではなかった。

本日“フォーティ・フォー”バースデーを迎えた二階堂瑠美もその一人。

東3局1本場

誕生日を祝福するかのような一気通貫・赤・ドラ2の満貫テンパイ。

それも

仲林から直ぐに放たれそうなプレゼント付き。

誰しもが時間の問題だと思っただろう。

しかし、

瑠美は突如としてツモ切りリーチを敢行した。

こちらも全体図を見て遡ってみる。

最終手出しの【1マン】からツモ切りリーチの間で大きな変化が起きている事にお気付きだろうか。

そう
“ドラの【1ソウ】ツモ切り”である。

試合前に瑠美は
「今年はMVPか個人成績最下位のどっちかっていうくらい、思い切って自分のオリジナルな打牌を出して行きたい。」

解説席からも
「形悪くて打点が高いケースは普通はあんまり出てこないですね。」

その言葉は当然、対局者の心に中へと潜っていく。

ここまで高い打点は出てくると思わなかったと、対局後の振り返り配信で語った仲林。

“蛇は蛇”

開局に自身で撒いた“誤情報を与える”という毒が、大きくなって自身に降りかかってくるとは思っていなかっただろう。

瑠美の魔法により【8マン】が河に吸い込まれていくと

バースデー・プレゼントとなる12,000(+300)を献上した。

だがしかし、瑠美の毒は一つだけでは無かった。

仲林が瑠美と岡田のリーチに挟まれた南2局

仲林から見ると完全に手詰まり状態。
【1ピン】【2ピン】が4枚見えで123の三色が無く、【8ソウ】も4枚見えとソウズの一気通貫が否定されている。心許ない情報と追いすがるように祈りながら放銃打点の低い【2ソウ】を選ぶも

まるで毒を有するツノを二つ身につけているような瑠美からはアガリ宣言の声が流れる。

だがしかし、リーチのみ2,000点。

ここは仲林も読み通りの最小失点で軽傷で済んだ。

しかし実はこの時、見えない猛毒を浴びせられていたのが

岡田紗佳であった。

持ち点こそ10,000点を割っているが、ここまで放銃無しと耐え忍びながら唯一と言えるチャンス手が舞い降りた矢先。

瑠美の決断と勇気のある、開けられた手牌を眺める事しか出来なかった─────────────

そして、迎えた
南4局

こちらはオーラスを迎えた親番・多井の手牌。

【5ピン】を切るとピンフ・赤の【6ソウ】【9ソウ】待ちという牌姿は言うまでも無い。

そして、持ち点は以下の通りとなっている。

◆点数状況
多井:46,200
仲林:26,700
岡田:15,300
瑠美:11,800

2着目の仲林とは19,500点差。つまり仮にリーチ棒を出した後、満貫を放銃しても着落ちにはならない。
また3着目の瑠美に至っては、30,900点差と跳満を打ち上げてもトップ確定。攻め得な様相を呈している。

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