「どこでメンツが出来るんだい? というのを探していますよね。」
絶好のカンを引き入れたあたりから堀の手牌と勝又解説がシンクロしていく。
「自分が赤2ドラ2を持っているわけじゃないですか?ということは、他の人は相対的にドラが少ないわけですね。だけど、今のところ全員シンプルに捨ててきている(手を進めている)から…」
と解説していると、4巡目、
太が見切ったドラを堀が叩いた。
「ポン? 345三色!」
実況の小林未沙さんがすぐにお気づきになられたが、この手牌から声が出る打ち手はどのくらいいるのだろうか?
123や789のように、端に追い込むことで愚形になっても役が確定する場合が多い時は仕掛けやすいと思うのだが、このように片アガリの形が2種類ある時点で仕掛けていくのは難しいのでは?
と、考えるのは私だけだろうか。
しかし、名解説者はその点について明快に答えを示してくれた。
前述の話の続きが展開される。
「普通、リーチのみなんて目指さないんですよ。ということは、タンヤオ形で手がまとまっているのではないか?
『あなたがた、この接戦で私は最低12,000や下手したら18,000ですが、勝負に来られますか?』
と。手の進行を止めてやる… それがポンの要因だと思う。」
勝又による考察は実に立体的で面白い。
「しかも、堀の河にはマンズが4枚並んでいる。ポンから推理されやすい手役は一色手や字牌の後付け… 三色のは盲点になる。」
勝又の解説のとおり、堀のこの一声で場はフリーズ。
全員が堀の河に注目せざるを得なくなった。
勝又の解説は続く。
勝又が注目したのは、ポンの後に堀の上家である醍醐が切っただ。
「ポンなので、カンはほぼ無い。が鳴かれるとすれば両面ターツ。ただ、両面ターツならいずれ自力で入るでしょ? と。むしろチーしてくれた方がトイトイの可能性がなくなるからそのほうがいいや! っていうことでを切ったのかもしれない。」
勝又はあくまで「かもしれない」と断定せずに話をしているが、「かもしれない」ではなく「間違いない」ほどの説得力を感じざるを得ない。
と、勝又が話していると、堀の手に動きが。
堀が本来フィニッシュに使いたかったであろうが先に入ってテンパイ。
「ソーズのホンイツをケアされる分だけの方はちょっと警戒されやすい。」
と、ここまでは観ている私にもなんとなくわかること。
しかし、勝又解説はここからのチョイ足しが素晴らしい。
「なので、、それからの6種類は空切りなんでしょうね。」
一般的に、危険牌は最終手出しの関連… とされている。
ならば、警戒されやすいソーズ以外の牌を手から切ることにより、ソーズへのフォーカスをぼやけさせる効果を狙おう、と。
単にアガリまでの道程に沿って話を進めるわけでなく、こういったテクニックの部分も丁寧に解説してくれるのは勝又解説ならでは。
残念ながら決着までに空切りの場面は観られなかったが…
流局間際に堀がタイトロープを渡りきり、混戦に終止符を打つ6,000オールをツモ!
序盤の河から他家の手やスピードを予測し、ポンの一喝で足止めした判断が素晴らしかったが、勝てる時は「声」が出るものなのだろう。
対局後に堀が心のうちを以下のように語っている。
「周りに自由に打たせるよりも、ドラだったら鳴いた方がいいのか… と思いつつも、本当にこれ鳴いてもいいのか? と揺れていたが、ドラが出て『ポンだ!』と思ったので鳴いたらすごく上手くいった。」
そして、堀のスピーチは続く。
「麻雀やっている人だったらみんなわかると思うんですけど、ああいう一人旅の局って、流局間際になればなるほどツモった時嬉しいんですよ。だから、あれは最高でしたね。」
第1試合で盟友の内川幸太郎が死地に沈んだ分をカバーする大活躍。
この快進撃、どこまで続くか?