急がば回れ、勝又健志の「手牌を壊してアガリを近づける」オーラスの捌き術【Mリーグ2024-25観戦記 11/5 第2試合】担当記者 #高倉拓馬

バラバラな手牌から【9マン】をポンしてホンイツ発進。40符になれば2600点、役牌が重なれば3ハンもありうる。

一方寿人【9マン】のポンを受けて、アガリトップ勝又の手牌。

かなり重要な局面、ここまで一定のテンポを刻んできた勝又も、ここで少考を入れる。

皆さんはどんな構想で何を切りますか?

 

ピンフをメインに据えた打【3ピン】

【3マン】のチーしやすさと、タンヤオのポンテンが取れる打【6マン】

マンズが変化したときの形が強くなる打【2マン】

案外【2ピン】も選択肢として悪くない?【7マン】が受け入れとして増えているので、タンヤオ確定で全部仕掛けられる偉さがある?

 

色々な意見があるだろう。

この局の結果から先に言うと、勝又はこの手牌を見事アガリに結びつけ、トップを決めたのだが、

開けられた手牌が下の形。

…?

さっきの手牌と、形が変わりすぎてはいないか?

ではこのアガリに至るまでにどのような打牌、思考があったのか、選手本人のインタビュー内容も交えながら解き明かしていこう。

では、話を何切るの場面に戻す。

勝又がここで選んだのは【2マン】。ただし、手牌構想は皆様の想像とは全く異なると思われる。

「カン【3マン】のチーしやすさで選ぶか、マンズを払いきる時に【6マン】【8マン】【8マン】の受け入れが残っている方が良いか考えた」とインタビューで勝又は話す。

そう、勝又は「マンズを払いきる前提」で打【2マン】を選択したのだ。

もう一度手牌に戻そう。

ここから打【3ピン】はマンズが埋まったときにはアガリ率が絶大だが、ピンズ、特に【1ピン】から入った時には手牌がもたつく可能性がある。

リーチしようにも待ちはマンズで微妙だし、かといって組み替えるにも遠い。仕掛けもペン【4ピン】残りになるかマンズ待ちになるかの2択を強いられてしまう。

さらに、打【3ピン】はマンズのリャンカン形を持ち続ける構想になり、これが意外と厄介。

手牌変化がほぼ見込めない形になるのがデメリットの1つめ。

さらに【2マン】【4マン】【6マン】を常に持ち続けないと受け入れ枚数が足りないため、寿人にのちのち危なくなるマンズを自身のテンパイまで打てない。

【6マン】はこの瞬間の【3マン】チーにかなり全力を注いでいて、解消できなかったときのもたつきは打【3ピン】と同様。

【2ピン】に至ってはマンズを持ちマンズ待ちにする構想のため、この時勝又の頭には無かったのではないか。

 

では打【2マン】の意図は何か。この形のイーシャンテン時に限っては打【6マン】とほとんど変わらないが、次のツモによって大きく変化する。

今回勝又が引いてきたのは【5ピン】。そして打【4マン】としてマンズを払いきる。

この瞬間はイーシャンテンの受け入れが劣化しているが、この形は

【2ピン】【3ピン】+【3ピン】【5ピン】という見方だけでなく、

【2ピン】【3ピン】【3ピン】+【5ピン】くっつき+【6マン】【8マン】【8マン】 のリャンシャンテン形

とも取れるのだ。

今回は【5ピン】のため少し形が微妙になってしまったが、ソウズ引きの際には大きく形が変化する。

例えばツモ【6ソウ】であれば

【3ソウ】【4ソウ】【5ソウ】【6ソウ】の4連続形+【2ピン】【3ピン】【3ピン】+【6マン】【8マン】【8マン】 の2シャンテンとも取れるため、かなり手広くなる。

これが【2マン】からマンズを払うことによるメリット。

リャンカンを払うメリットは他にもある。

リャンカンを払い切ることで、次の【9ソウ】もくっつきとして残すことができるようになる。

これで良形、あるいは仕掛けての役ありへ向けて、かなり盤石な形が作れた。

結局勝又は【3ピン】をポンして打【2ピン】。現状は【5ピン】のくっつきかソウズイッツーの1シャンテン。

この手牌にすぐ【6ピン】がくっつき、

このアガリ形に至ったのであった。

 

「軍師」勝又健志

的確な河読み、展開予測を自分の打牌に最大限活用し、アガリをもぎ取る打ち手。

その一打一打には、長年の経験の末練り上げた緻密な戦略が詰まっている。

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