南3局、日向藍子 勝利の満貫ツモに至るまで【Mリーグ2024-25観戦記 12/10 第2試合】担当記者 #東川亮

日向は4枚目の【2マン】を少考の後、ツモ切り。リスク回避がダマテンの理由なら、暗槓はその思考から外れた選択になる。

同巡、小林が場に4枚目の【9ソウ】をツモ切り。

菅原の手はあわやのところまで来ていたが、夢は潰えた。

それを受けて、瑠美は空切りでリーチと打って出た。菅原の国士無双の可能性が消えたこと、ピンズ一色手模様の小林からまだピンズが余っていないことで、リーチをぶつけて決め手にしようとしたか。もちろんダマテン続行の選択もあったが、強気な勝負だ。

直後、日向の手が止まる。【南】は1枚切れでリーチの現物。小林にはダブ【南】だが、国士無双模様だった菅原が1枚は持っていると考えると、かなり切りやすそうではある。

切ることは決まっている。あとは、切ってどうするか。意を決したように、日向は声を発した。

リーチだ。

ここでダマテンにしたら、危ない牌を引いたらオリることになりそうだ。そうなれば、ツモられれば逆転まであり得る状況、流局したとしても、次局はさほど重くない条件が瑠美に残ることになる。そして自分の待ちも悪くはなく、リーチの瑠美から切られた25pを捉えられないのは最悪。もちろん放銃リスクもあるが、それらを鑑みた上で、日向はリーチのほうが優位と判断した。

小林もテンパイして無スジかつドラまたぎの【9ピン】を押す。清一色ドラ1、ハネ満テンパイはトップまで見える勝負手。そもそも、あんな夢も希望もなさそうな手をここまで持って来たのは、1巡目の【2ピン】チーが始まりだった。

決着は一瞬でついた。日向、一発ツモ。

リーチをしなくてもツモっていた牌だったが、それだと500-1000のアガリにしかなっていない。それが2000-4000、4倍の価値になったのは、瑠美のリーチ宣言が誘発したところもあっただろう。瑠美としてはリーチをしない手もあり、それで日向がダマテンだったら次局にハネ満条件を残せたが、これで倍満でも届かなくなってしまうという痛い結果になり、オーラスでは小林の反撃によって2着も取り逃すことになってしまった。

この日の出場を監督に直訴したという日向は、試合後のインタビューで「麻雀が打てるのは本当に当たり前ではない」と語った。

胸中にある思いは分からない。

けれども彼女は、これからもその気持ちを抱きながら、怖くても苦しくても、諦めず、妥協せずに戦っていくのだと思う。

この日の試合のように。

  • この記事が気に入ったら
    フォローをお願いいたします!
    最新の麻雀・Mリーグ情報をお届けします!

  • \近代麻雀シリーズ 新刊情報/