それでも全体的にスピーディーなのは間違いないし、それまでに紹介した一連の選択では、速度差がほとんどない。
捨て牌のトーンなど、打牌速度以外にも進行状況を読める情報はある。しかしそれでも、寿人はその早さで相手に「間合い」つまり「手牌の相対的な距離感」を簡単に読ませないのが強みだ。
これも一つの、

「プロの麻雀」である。
手痛い放銃となってしまった渋川。「は、少し前に出て(寿人が)鳴いていないので、(タンヤオ赤赤などの)高いダマは出てきにくいと思った」とも後に語った。
もちろん、ション牌のを寿人は打ってきているので、警戒自体はしていたことだろう。
「だけ切っておいて、あとは合わせ打ちをしていこう」
という考えだったそうだが、ここは寿人に軍配が上がった形だ。
背後に迫っていた、寿人の静かなる一撃。
試合後のインタビューで、渋川はこの場面を、

「今シーズン1効きました」
と表現し、心情を吐露した。
インタビューで聞かれたとはいえ、渋川がこうして「ミスかもしれない部分をしっかりと自己分析して振り返る」姿を、私は潔く、また格好いいと思う。
パーフェクトに打ち続けられる人間はいない。
気になる点は省みて、次へ繋げていく姿は、疑問手だらけの我々素人を勇気付けてくれるもの。これもまた「プロの姿」だ。
そして、寿人。
振り返れば、南1局にアガったときも、

このテンパイからの、

ノータイムダマテン!!
そして、

渋川が処理しようと試みた、5枚目の–
を、

ピンフ赤赤、3900は4200のアガリでとらえたのであった。
ダマテン気配は非常に分かりにくそうだ。
オーラスでは、

フリテンのリャンメンテンパイをツモアガって、接戦を制した寿人。

「柔よく剛を制す」といったスマートな内容で、年内最終戦をトップで飾った。
インタビューで、自らの勝利を喜ぶだけでなく、

「みなさんにとってもいいプレゼントになった」
とファンにも思いを馳せていた寿人。
そして番組終了後には、
あの出来の渋川君を逆転できたのは嬉しい!本年もありがとうございました!よいお年を✌️
— 佐々木寿人 (@sasakihisato) December 26, 2024
同卓した渋川へのリスペクトも表していた。
そのような形で、KONAMI麻雀格闘倶楽部、2024年最後の試合は、

佐々木寿人が、美しく締めくくった。

京大法学部卒の元塾講師。オンライン麻雀「天鳳」では全国ランキング1位。「雀魂」では4人打ち最高位の魂天に到達。最近は、YouTubeでの麻雀講義や実況プレイ、戦術note執筆、そして牌譜添削指導に力を入れている、麻雀界では知る人ぞ知る異才。「実戦でよく出る!読むだけで勝てる麻雀講義」の著者であり、元Mリーガー朝倉康心プロの実兄。x:@getawonarashite